狐を罠にかけろ(上)
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……私が君を呼ぼうとしたのも、この小艦隊の対策案を君に考えてもらおうと思ったからだったが」
「はぁ」
ヤンは困ったように、言う。なんと言葉を返せばいいのか、悩むところだったのである。
「ふむ、なかなか悪くない作戦案だと私も思う。もう少し時間をかけて読ませてもらおう」
ヤンはこの作戦案が恐らく採用されると知っていたから、そのまま参謀長室を出ようとしたのだが、思い出したように付け加えた。
「参謀長、言い忘れておりましたが、作戦案にある初めの囮は第5艦隊のチェン分艦隊を使っていただきたいのですが」
「チェン艦隊?」
グリーンヒルはビュコック提督の元にある、分艦隊の名に眉をひそめた。確か、あれは士官学校の教授をやっていた男が率いている分艦隊だったはずだ。なかなか優秀な男で、囮役として十分な能力を有してると思われた。
「まぁ、あの分艦隊ならば役目を果たしてくれるだろう。わかった、もし採用する場合は、そう手配しよう」
グリーンヒルは2時間後、再びヤンを呼び出して、作戦の採用を告げた。ヤンはそれに頷き、「はぁ」と言っていたが、
「ひとつお願いがあります」
「言ってみたまえ」
「この作戦案は、グリーンヒル閣下のご発案ということにしていただけませんか」
「しかしそれでは、君が作戦立案にはたした役割を無視することになる。軍としての筋が通せなくなるぞ」
「いえ、私の作戦案だということがわかると、各部隊があまり真面目に動いてくれないでしょう。参謀長閣下のご指示ということであれば、きちんと動くでしょうから」
敬礼しかけて、その手を止め、ヤンはやや鹿爪らしくつけ加えた。
「ええと、それと、僭越ではありますが、どうか兵力を出し惜しみなさって、大魚を逃がすことがなければ幸いです……。どうかよろしく」
グリーンヒルはロボス元帥に作戦案を提出し、そのための準備に着手した。そしてその最中、チュン分艦隊には、あの男がいることに気付いたのである。
その日遅く、フロルはグリーンヒルの参謀長室に姿を現した。5分後、彼が去ったあと、グリーンヒルは更に忙しくなったのである。
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※訂正※
本部→総司令部
参謀本部→総司令部
ワイドバーン→ワイドボーン
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