士官学校
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
士官学校
「と、いうわけで本日は戦術コンピュータを使用した勝ち抜き戦である。君たち2年生にとっても、戦術理論の科目の上で、非常に重要な意味を持つことは言うまでもあるまい。さて、本日の試験には本学校校長であらせられる、シトレ校長にもお越し頂いた。心証を良くしておきたいと思う者は、せいぜい良い結果を残すことだ。以上、<戦闘開始>!」
今日は後期の学期末試験の日である。
3年生としてとっくに期末試験を終えているフロル・リシェールなどは、暇つぶしに今日の試験を見に来ている。この試験では高性能PCを使ったシミュレーションによって実戦と近い条件で、1対1の勝ち抜き戦を行う。その条件は試験直前まで公開されない。ある者たちは小惑星帯での遭遇戦、ある者は地域制圧戦など、その任務条件は多岐に渡る。
「そういやぁ、俺も去年やったなぁ」
「まったくお前ほど不真面目な癖に、この手の試験に強い男はいなかったな」
フロルの横には、いつの間にかシトレ校長が歩み寄っていた。
「校長だって去年は褒めてたでしょう?」
「褒めるべきところは褒め、諌めるべきところは諌める、それが教育者だ」
そういうとフロルは肩を竦めた。実はフロルは、この試験の昨年優勝者である。
もっとも総合的な評価は、その後輩ヤンに勝るとも劣らない散々なものであるが。
興味のない教科、例えば戦史57点、機関工学演習59点などはかなり悲惨であった。射撃実技65点、戦闘艇操縦実技68点に関しては技術的な障害よりも、むしろその授業態度が理由であろう。戦略論概説95点、戦術分析演習97点など、彼が授業にも真面目に出席し、尚かつ評価が高いものなどの方が少なかったのである。
シトレはなんやかんや言って、この変わり者、問題児の生徒を可愛がっていた。そこはそれこそ、フロルの人徳というものだろう。そういう男なのである。
「今年の有力馬は誰ですか?」
「マルコム・ワイドボーンだろう。10年に一人の逸材と聞いている」
「ワイドボーンねぇ」
「どうした、ワイドボーンの優秀さはおまえも聞いてるだろう」
「俺は優等生が大嫌いでね」
フロルは校内で有害図書愛好会を作っていたのである。本来の史実ならば、それはアッテンボローの業績だったが、彼は何より彼自身の<伊達と酔狂>でそれを結成し、活発に活動していたのである。
「じゃあお前は誰が優勝すると思う?」
「俺は、ヤンかラップを押しますね」
「ほぉ、あの二人か。ラップはともかく、あのヤンか?」
ヤンとラップが親友、と呼べるほど仲がいいのは周知の事実である。
もっとも落ちこぼれコンビ、というわけではない。ラップは諸事卒なくこなすタイプの生徒であり、今まで問題という問題を起こしたことはない。起こしたとしてもたいて
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ