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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
穏やかな日々
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は彼独特の笑い方をしながら言う。彼が皮肉を言う時には、いつもあの笑みが頬に浮かぶのだった。

 カリンがよっこらへっちらと椅子を運んでたが、ユリアンは自分より二つ年下の少女を見かねて手を貸してやっていた。カリンは素直に礼を言う。それにユリアンは照れたように笑う。どうもあの坊やはカリンに気があるようだ、とイヴリンは気付いていたが、カリンの方は何も感じていないことも察していた。


「ほら、昼食だぞ」
 フロルは出来上がった5人分のサーモンのクリームパスタを皿に移す。カリンとイヴリンはいつものようにそのお皿をリビングに運んだりフォークを用意する。料理を作るのはたいていフロルの分担で、それ以外はカリンとイヴリンが手伝っているのだ。もちろんフロルは手作りでエリィのご飯も用意している。料理やお菓子作りに関しては、フロルは器用極まりないのである。

 フロルが席についてから、みんなでいただきますと言ったあと、食べ始める。カリンは大好きなパスタを小さな口に勢い良く運んでいたが、それ以上にヤンとユリアンの食べっぷりも豪快というべきだった。
「ヤン……おまえさん、まさかまた」
「いや、ちゃんと食べてますし、食べさせてますよ」
 ヤンはその言葉に慌てたように言う。
「じゃあ今朝はちゃんと食べたのか?」
「……ええ、まぁ一応」
「どうせユリアンに作らせたんだろう」
「はい」
「で、おまえさんは惰眠をむさぼっていたんだな」
「ええ、よくわかりますね、先輩」
「おまえさんという奴は」
 フロルは呆れたように額を抑えた。
 ユリアンはきっといつも外食か、もしくはユリアンが自分で作った料理を食べていたのだろう。そんな彼にとって一番のごちそうは、キャゼルヌ家で頂くキャゼルヌ夫人の手料理だったのである。そしてこのフロルの作る料理も、そこまでの腕前ではないにしろ、相当に美味しいものだった。

「おかわりはいくらでもあるから、ゆっくり食べていいぞ、ユリアン」
「おかわり!」
 カリンが空になったお皿をフロルに突き出す。
「はいはい」
 フロルは微笑みながら立ち上がり、キッチンで新しいパスタを盛ってあげる。
「フロルさんのお料理、本当に美味しいです」
「そうか、ありがとうな、ユリアン」
「だから言っただろう、フロル先輩は料理の達人だって」
「イヴリン、今日のパスタはどう?」
「ええ、とても美味しいわ。でもヤン大佐じゃないけど、女なのに私はこんな料理、作れないわ」
「料理なんてただのスキルさ。イヴリンはそんな事を気にしなくていい。イヴリンの魅力はそんなことじゃないよ」
「! ……フロル!」
「今日もイヴリンとフロルは熱々ね」
「カリンちゃん、二人はいつもこんな感じなのかい?」
「ええ、私の目の前なのにね。ヤンさんもなんか言ってや
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