穏やかな日々
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くれ。あ、そうだ、カリン、おまえも自己紹介したらどうだい?」
カリンはカチコチになってヤン・ウェンリーを見ていたが、それでも礼儀正しく、可愛らしくお辞儀をして、自己紹介をした。フロルはそこでユリアンが熱い目線でカリンを見ていることに気付いた。
(どうやら面白いことになったようだ)
彼は将来くっつくであろう二人を見て、微笑ましくてたまらなかった。
「私はイヴリン・ドールトン大尉です。フロルのパートナーです」
「あ、それは、ええっと、こちらこそ」
ヤンはなんだかよくわからない返事を返していた。彼の女性に対する対応はいつもあんな感じだ。その女性が自分の部下だったり上司だったり、とにかく役職を持っていて、仕事として接する分にはなんの問題もないのだが、それが私的に女性と接するとなると、いつも困ったような反応をするのだ。
「四人とも、もうすぐパスタも茹で上がる。リビングのテーブルには椅子が4つしかないから、カリン、椅子を一つ持ってきてくれるかな?」
「うん」
その日のカリンは長くなった髪をポニーテールにして、いつか買ってやった白いワンピースを着ていた。フロルがもしも幼女趣味だったら放ってはおかないほど可愛らしい。
ユリアンは目の前を歩きすぎた可憐な少女を思わず目で追っていた。とても可愛らしい女の子である。今日、このフロル・リシャール中佐の家に来ることになったのは、昼ご飯を用意するのが面倒になったヤンの思いつきで、ユリアンはそれに付いて来ただけだったのだ。まったく、唐突な出逢いと言えよう。
「ユリアン、近くの官舎にフロル・リシャールという男がいてね」
ヤンはぽんと、手を打ち合わせて、何かを思いついた動作のあと、ユリアンに言った。
「ええ、知ってますよ、大佐。大佐の先輩だった人でしょう?」
「ああ、いろいろと世話になったというか世話をしたというか、まぁそういう人なんだけどね、フロル先輩は私は持っていない大きな特技を持っているんだ」
「はぁ」
ユリアンには話の出口が見えなかったが、どうやら自分は昼食を悔い損ねることは避けられるらしい。
「先輩は料理の達人なんだ。いや、正確にはお菓子作りなんだが、それでも私が作るよりは百万倍美味しいご飯を作ってくれるだろう。私などは先輩の作ったご飯で、士官学校時代空腹を凌いだと言ってもいいくらいだけどね、そこで今日は先輩の家に行かないかい?」
「いいんですか? 突然行ったら先方も困りますよ?」
「いやいや、そういうことは何度もあったが、先輩はいつも料理を作ってくれたから大丈夫だ。それにおまえに先輩を会わせてやりたいしね」
ということになって、突如ユリアンはフロル中佐の官舎に来ることになったのだった。だがいざ行ってみると、そこには大きなシェットランド・シープドックがいたり
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