穏やかな日々
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った。彼はすぐにフロルがトラバース法によって、自分と同じように子供を預かっていることを思い出したが、その女性の方は明らかにフロルの彼女であるだろうと考えた。
もしかすると、一家団欒??この言葉は正確ではないだろうが??を自分は邪魔してしまったのではないだろうか。
「ヤン、また性懲りもないことを考えてるな」
フロルはそのヤンの困った顔を見て、笑いながら言う。
イヴリンはとっくに猫被りモードに移行しており、カリンは寝そべっていて変になった髪やら服を必死に直している。
ヤンの後ろに立っているユリアンは、どこか困った顔で所在なさげであった。
「すみません、先輩。すっかり失念してました」
「気にするな、二人とも俺の家族だ」
フロルは肩を竦めて見せる。それよりも、フロルはこの時間に来たヤンの思惑をすでに看破していた。
「それよりもヤン、おまえさん、俺に昼飯を作らせるために昼時に来たな」
「ええ、まぁ」
ヤンは士官学校でも、その卒業後でも、何度かフロルの家に来てご飯を食べている人間だった。それはヤン・ウェンリーという男が生活面にいて明らかな劣等生であるため、フロルが面倒を見ている、という側面もある。だがそれ以上に、この面倒くさがりな男はフロルという都合の良い先輩を、狡猾に活用していたという側面もあるだろう。
ヤンもフロルも、面倒くさがりという点において性格的な類似性を持っていたが、逆に好きなことはとことん好きという点も同じであった。ヤンにとってはそれが歴史に対する熱意であり、フロルにとっては菓子を始めとする料理なのであった。ヤンはフロルの熱意を利用していたし、フロルもまたヤンから聞かされる歴史話が嫌いではなかった。前世では地球にいたフロルにとっては、それ以後の歴史というのは存外興味を誘われる対象だったのだ。
「そんなことだろうと思ったよ」
「すみません、日を改めます」
「変な気を使うな、おまえさんらしくもない。料理が3人前から5人前になっても大して変わらんよ。それよりも、その美少年を俺に紹介しれくれるかな」
「ええ、もちろん」
ヤンはその言葉にほっとしながら、自分の後ろに立っている少年を、前に立たせる。ユリアンは先ほどから、フロルの家にいる、フロルの髪の色を薄くしたような紅茶色の髪を持ち、青紫色の瞳を持った少女に目が釘付けだったが、自分の尊敬する保護者の目線に気付いて、赤面して前に立ち直した。
「ユリアン・ミンツです。ヤン・ウェンリー大佐にお世話になっています」
「そうか、君がユリアンくんか」
「フロル先輩は、知ってるんですか? ユリアンを」
「まぁね」
フロルはそこで少しだけ寂しそうな顔をしたが、すぐに笑顔を作った。
「ヤン、ユリアン、よく来たな。今パスタ作ってるから、少し待って
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