涙と幸せ
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を見守っている。近くても、遠くても、私は君を常に想っている。それを、忘れないでくれ」
「……っ……はい」
「笑って、カリン。カリンには笑顔の方が似合う」
泣きながら、それでも笑おうとしたカリンの笑顔は、フロルに何にも勝る安心感を齎していた。
この子は強い。
だが、その強さは一度挫けたら、もう立ち直れない類の強さだ。だから、彼女が一人で立っても、決して折れないで生きていけるようになるまで、フロルはこの子を支えて上げようと決心していた。それは2年前、キャゼルヌの部屋で彼女の名前を見つけた時に立てた誓いであった。
「…っ……このスフレ…私が作ったの」
カリンは形は不器用でも、美味しそうなチーズスフレを指差して言う。きっとフロルが帰って来ると聞いて、彼のために作ったものなのだろう。
「そうか、じゃあ一緒に食べようか」
「うん!」
フロルは、カリンの頭をそっと撫でた。その子供特有の細くて柔らかい髪がさらさらと光り、カリンの目から零れ落ちる滴も、ようやく止まろうとしていた。彼は生きてここに戻れたことを、世界のどこかにいるであろう神に感謝した。どんな種類の神でもよかった。
この笑顔が見られる今、フロルは確実に幸せだったのである。
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※訂正※
イブリン→イヴリン
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