戦の始末
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分は信頼に足る人物を、部下以外にも見つけたらしい。
だがそんな二人の後ろから救急のロボットカーを走らせて救護班がやってきた。その中には誰も入っていなかったが、誰かを入れるために走っているのは明確だった。
「おい、どこに向かっている?」
下士官は息を切らせながら言う。
「デア・デッケン少尉に呼ばれまして」
「デア・デッケンが? 負傷したのか」
「いえ、少尉は救護班を呼ばれただけです」
そう言うと彼らは二人の横を走り抜けた。
「……おい、ブルームハルト、あれについて行くぞ」
「了解」
そしてその2分後、彼らは右胸を負傷し、意識を失っているフロル・リシャール中佐に対面するのであった。
「危ないところだったな、キルヒアイス」
敵の追撃を逃れきって、無事帰りの装甲車に乗ったラインハルト・フォン・ミューゼル准将は、隣りに座っているジークフリード・キルヒアイス大尉に声をかけた。ラインハルトはフロルに、キルヒアイスはシェーンコップとの死闘を繰り広げてきたのだ。勝敗はつかなかったが、何かの拍子で自分が死者の列に並んでいたとしても、不思議はないのである。
「はい、ラインハルトさま。私のせいでお手数をおかけし、すみません」
キルヒアイスは最後の不手際を謝りながらも、相手をした男のことを思い出していた。
フロル・リシャール中佐。
ラインハルトに胸を撃ち抜かれても、一歩も引かぬ形相で、味方二人を守った男である。
「あの男、リシャール中佐とか言ったか」
ラインハルトもまた、その男を思い出していた。ゼッフル粒子をブラフに使って白兵戦で彼に勝負を挑み、自分の上官であろう中将とその副官を守った男である。ラインハルトが引き金を引いた瞬間、彼の頭には後悔と驚愕と悲鳴が金切り声を上げていた。彼はフロルのブラフを信じていたが、それでもあの時、引き金を引かざるを得なかったのである。
「危ない……ところでした」
キルヒアイスはあの瞬間、女性士官のヘルメットの奥に、アンネローゼの面影を見たのだった。イヴリン・ドールトンは美人である。程度に違いはあっても、遮光板によってよくは見えなかった女性士官の顔が、アンネローゼに見えたとしても不思議はない。そして何より、自分の戦斧の前に飛び出した女性は、リシャールという男のために自分が盾になろうとしていたのであった。キルヒアイスは多くの敵を屠って来たが、未だ女性を自らの手で殺したことはなかったのである。あの瞬間、自分は彼女を斬り殺すのを躊躇してしまった。おかげであと一拍ののち、自分の命は永遠に断たれるところだったのだ。
「キルヒアイス、おまえは優しい男だ。だが、敵にまで優しくある必要はない」
「わかっては、いるのですが」
キルヒアイスの心情は、ラインハルトもよ
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