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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
ヴァンフリート4=2の激戦 (中)
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引き上げるだろう。


 その間にも、殺戮の手は奥へ奥へ伸びて、オペレーション・ルームにまで到達していた。そこに現れた帝国軍兵士に、一人の射撃手が現れた。
 気密服に身を固めた女性兵士、ヴァレリー・リン・フィッツシモンズ中尉である。
 彼女はその手に握りしめた銃の引き金を引いた。銃口からビームがほとばしり、敵兵の装甲服の胸に炸裂した。だが、炸裂しただけであった。その拳銃の威力では、装甲服の防御力を上回ることはできなかったのだ。敵兵は一歩よろめいて、足を踏みしめ、そのみじめな女性兵士に、荷電粒子ライフルの銃口を向けた。
 その時であった。

 一本の戦斧(トマホーク)が飛翔し、銃を持った敵の首に突き刺さったのである。

 フロル・リシャールだった。
 フロルは投擲した勢いもそのままに一気に距離を詰めた。後ろにいた二人の敵兵が彼に気付き、銃を向けようとしたからである。彼は一気に飛び込み、その銃線を交わした。そして勢い良く立ち上がった時、彼は床に落ちていた戦斧を右手に持ち、尚かつ間合いは極至近であったのだ。
 彼は短く持った戦斧を小さく振り抜き、二人目の首を切り裂いた。勢い良く血が吹き出るののも気にせず、もう一人の敵兵の銃を蹴り飛ばした。敵はすぐに後ろに手を伸ばし、幅たり20センチはある凶悪な軍用ナイフを手に取ろうとしたが、数ヶ月薔薇の騎士連隊(ローゼンリッター)で鍛え抜かれたフロルにしてみれば、遅すぎたというべきだった。フロルは右手の戦斧で股下から切り裂くようにそれを振るい、一瞬でその哀れな敵兵は絶命したのであった。

 廊下にはフィッツシモンズ中尉と、フロルが残ったのであった。
「あ、ありがとうございます」
 フィッツシモンズ中尉はまだ命の危機という状態に動揺しているようだった。銃を持つ手が震えていた。
「フロル、フロル・リシャール中佐だ」
 フロルはまったく平静な呼吸でそう答えた。彼は自分の手で敵を殺す、ということの重みを実感していた。今ここに伏して死んでいる人間は、自分が殺したのだ。
 だが戦場で考え込むことは自殺行為である。彼はその感傷を心の奥に押し込み、通信回線で薔薇の騎士連隊(ローゼンリッター)を呼びかけた。
「リシャール中佐です。薔薇の騎士連隊(ローゼンリッター)はどこかにいませんか?」
『おっと、聞こえるぜ、中佐殿』
 シェーンコップの声は、ふてぶてしいまでの自信に溢れていた。流石連隊長になる男だ。声を聞くだけで、安心できる錯覚すら覚える。
「シェーンコップ中佐、今すぐオペレーション・ルーム前まで来て下さい。フィッツシモンズ中尉と仰る女性士官が敵装甲兵3名に襲われました」
『! なんだと! ヴァレリーはどうした!?」
「私は無事よ」
 フロルとシェーンコップの通信に、彼女は割り込んでそう
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