ヴァンフリート4=2の激戦 (中)
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はいかない、とも。カリンが待っている、あのハイネセンに戻らなくてはならない。この防衛戦が終れば、きっと帰れる。
フロルはそこで、唐突にもう一人の女性の名前を思い出した。
「なぁ、ヴァレリー・リン・フィッツシモンズとは、仲が良いのか?」
「え? ええ、同じ女同士、仲が良い方だと思うわ」
「そうか、いや、シェーンコップの彼女だからな。聞いてみただけだ。確か彼女は対空迎撃オペレータの中尉だったか」
イヴリンは小さく頷いた。それを見て、フロルは考える。シェーンコップはこのまま行くと、彼の大切な理解者を失うことになる。彼の腕に抱かれる女はそれこそ数えられぬほどいるだろう。だが、彼を理解してそれを愛する女が、そういるとは思えなかった。できることなら、ヴァレリーも助けてやりたい。シェーンコップは孤独な男だ。自らそれを望んでいるのかもしれないが、彼が悲しむ姿という不愉快極まりないものは、できることなら見たくなかった。ここ数ヶ月の関係で、すでにフロルはシェーンコップという人間を好きになっていたのだった。
そうしてフロルは、翌日の戦いに向けて、更に頭を巡らすのであった。
4月6日、0622時のことであった。装甲地上車、自走レール・キャノン、地上攻撃メカを主力とした、帝国軍地上部隊が、基地北部の地上戦に姿を現した。
シェーンコップ中佐以下全地上戦闘員は装甲服を着用し、それ以外の兵士全員が気密服を着用した。フロルもまた、薔薇の騎士連隊より紳士的に送られた装甲服を着用している。これはここ数ヶ月の努力の証、ともいうべきもので、シェーンコップあたりが言うならば、「もし降格されて中尉くらいになったら、我が薔薇の騎士連隊に入れてやる」ということだった。それはどちらかというと悪罵の類にも受け取れたが、フロルはそれを快く受け取ったのである。
両軍の通信波が同調した。これは互いに勧告もしくは通達をするための措置である。ここで予め許可をとっていたフロルは、司令官に代わって、そしてシェーンコップにも代わって、第一声を放ったのである。
「帝国軍に告ぐ。無駄に死ぬつもりのない者はただちに立ち去れ! 今ならまだ間に合うぞ! おまえらが死んで悲しむ女のことを考えろ! 死ねばヴァルハラから自分の女が違う男に寝取られる姿を、指をくわえて見る羽目になるぞ!」
これは本来、シェーンコップの放つ台詞、といったところであった。いや、むしろシェーンコップが言うより派手というものだったであろう。帝国軍は劣勢であるはずの同盟から放たれたこの挑戦状に、信じられない思いであったのだろう。リューネブルクなどにしてみれば、明らかに自分のことを皮肉られていると気付いたものだから、その怒りと憤りは尋常なものではなか
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