ヴァンフリート4=2の激戦 (前)
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
るとわかった。彼は経験豊富な陸戦部隊のプロであり、そこにいる薔薇の騎士連隊連隊長代理もそれは認めるところだ」
フロルは作戦会議で発言した。彼の役割は、ここにいる防衛部隊の各指揮官の意見を統一させ、今回の困難な防衛戦を潤滑に行うことであった。言わば彼は軍事に疎い司令官の代わりに、この基地の潤滑油になっているのである。
「皆は最悪でも4月6日までここを守り切ればいい。そうすれば味方の増援がやってくるだろう。地上装甲車はあまり前に出さないように、敵の有線ミサイルの標的になる。彼らの陸戦兵器は豊富だ。甘い陣を引けば、容易くそれを破って来るだろう」
「リシャール中佐殿、発言よろしいかな?」
シェーンコップが形だけの礼儀で、フロルに尋ねる。
「どうぞ、シェーンコップ中佐」
「この作戦は本来、どだい成功しえないものだ。劣悪な兵器と少数の兵力、不正確な情報と過剰な闘志。これで押し寄せる5倍の兵力に勝てるわけはない。だから最初から勝利を諦めているリシャール中佐の考え方には共感しようと言うものだ。見事な卓見でしょうな」
「それは、ありがとう」
フロルはほとんど口を斜めにしながらそう言い返した。
「この戦い、つまりこのヴァンフリート4=2での戦いだが、これは同盟軍にとっての戦略的勝利条件は救援まで持ちきるの一点に尽きる」
フロルは改めて作戦趣旨を繰り返した。
「だが戦術的な面においては、小官よりも薔薇の騎士連隊や各防衛部隊の方が多彩な発想が出来るだろう。大枠の流れは小官が作った。あとは貴官らの自由裁量でこの基地を守ってもらいたい。以上だ」
こうして、4月5日の、つまり帝国軍の攻撃前最後の作戦会議は終了した。
その作戦を終え、宿舎に戻る道すがら、シェーンコップは考えていた。なかなかどうして、セレブレッゼ中将のような素人の下で戦うハメになるかと思えば、リシャール中佐のような有能な男が現れたものだ。自分の不得手を心得、それを他人に投げつける点においてセレブレッゼもなかなか器量があるものではないか。だが、何よりあのリシャール中佐だ。彼はこの作戦の趣旨と目的と作戦目標を誰よりも早く見定め、その準備をし、俺が望み叶えうる最高の作戦を立案している。士官学校のエリートにしておくには、惜しい人材だ。彼こそ、もしかすると将来自分が下につくに足る人間に成りうるのではないか。
シェーンコップは自身の向かう先を、自室ではなく女の部屋に変えて、一人思慮にふけっているのであった。
************************************************
※訂正※
司令官→司令長官
一平卒→一兵卒
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ