薔薇の騎士連隊
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ーンコップ、凄まじい勢いだ。
シェーンコップはその斧を振り抜きざま、翻ってそれを振り下ろす。フロルはそれを戦斧の柄で受け止めた。火花が散る。フロルはその重さに驚く。押し潰されそうだった。
辛うじて間を空け、シェーンコップの胸に蹴りを叩き込む。
無理矢理作った間合いだったが、立ち上がるだけの時間は作った。
お互い、そこで息をつく。どうにか上手くフロルはよくやっている、といったところであった。シェーンコップもまた、不敵な笑みを浮かべる。
「なかなかどうしてやるじゃないか」
「こちらこそ、お褒め頂きありがとうってとこだな」
フロルは暴れそうになる息を抑えつつ、言葉を返す。
「だが、それまでかッ!」
シェーンコップは鋭く左手を狙って斧を振るう。フロルは咄嗟に、左手を戦斧から離し、それをかわし、右手に持った斧でシェーンコップの首を狙う。柄の滑らせることで、シェーンコップからは戦斧が伸びたように見えたであろう。だがそれをシェーンコップは間合いを詰め、左手で柄を受け止めたのだ。そして斧を持った右手でフロルの腹を思い切り殴り上げる。
フロルはこれをもろに食らって、半メーターは浮き上がっていただろう。彼は後ろに後ずさり、蹲ってしまった。
シェーンコップはそれを見て、ヘルメットを外して放り投げ、フロルに歩み寄った。その瞬間、フロルは右手に持っていた斧でシェーンコップの足を薙いだのだった。隙を突かれたシェーンコップは咄嗟に上に飛んでそれを回避したが、立ち上がって彼の胸を突いてきたナイフに間に合うべくもなかった。言わばこれはシェーンコップの隙を突いただけという話で、二度目は効くまい。だが、シェーンコップの装甲服に模造ナイフが当てられているのと、フロルの首筋にシェーンコップの戦斧が突きつけられているのはほぼ同時だったのである。
周りの観衆もその意外な結果に息を呑んだ。フロルのやったのは明らかな奇襲であり、それ自体は意地汚いと言われる類のものであったろう。事実、フロルは既にそれ以上の戦闘行動ができる状態ではなかったのである。だが、白兵戦において相手の息を止めるまで油断するな、とは基本中の基本である。そこでフロルを甘く見たシェーンコップの油断も、この結果の原因だったのだ。
「フロル中佐、俺はちょっとあんたを甘く見ていたらしいな」
シェーンコップが息一つ乱さぬ声でそう言った。
「……はぁ、はぁ、それは、はぁ、あんたの買いかぶりだ」
フロルは必死にそれだけ言うと、大の字になって伸びてしまった。シェーンコップの隙を突いたのは幸運の類であり、実力では遥かな差があるだろう。だが、フロルは彼の油断だけを狙い、結果引き分けになったのだ。フロルにしてみれば、満足という話である。
「油断大敵、か。殺ったと思って気が緩んだときが一番危ない、とい
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