薔薇の騎士連隊
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ルはこれが挑発になることを承知で、こう言った。シェーンコップは底冷えのする目のまま、にやりと不敵に傲慢に笑みを浮かべた。
「わかりました、中佐殿。それでは小官とお手合わせ、としましょうか」
そうして、急遽、新任中佐と、薔薇の騎士連隊副連隊長との模擬試合となったのだ。彼らは同盟の装甲服を着用し、刃引きされた戦斧を片手に、訓練場に現れたのである。
「おいデッケン、聞いたか。我らが副連隊長が新任の中佐殿と模擬戦をやるらしいぜ」
「ああ、聞いた」
ライナー・ブルームハルト中尉が興奮したように、カール・フォン・デア・デッケン中尉に言った。それもそうだろう。先ほど連隊長室に入って行った新任の中佐が、突如シェーンコップの模擬戦の相手されたのだ。よほどシェーンコップを怒らせたのではないか、と思っていたのである。更に、フロルの訓練参加申し出自体、まだ連隊員には知らされていなかったということにも原因があるだろう。いきなり喧嘩になった、と皆思っていたのである。
「あの中佐はこの基地に何しにきたのかな」
カスパー・リンツ大尉が半ば独り言で呟く。
「というと?」
「いや、半殺しされに来たんじゃないかって話さ」
そういうと、リンツは肩を竦めた。なるほど、そういう見方もできるのか、と一同思ったのである。
「どうやら観客にはこと欠かんようだな」
シェーンコップがヘルメットの奥で笑いながら言う。
「まったくだ。こんな大勢の前で、格好の悪いところは見せられんな」
フロルが手に持った戦斧を握り直しながら言う。ヘルメットの中には無線が内蔵されており、お互いの声が聞こえるのであった。フロルは久しぶりに着た装甲服の感触を確かめていた。士官学校を卒業した後でも、自主的なランニングやトレーニングは欠かさなかった律儀なフロルであるが、白兵戦の勘までは忘れているだろうと思っていた。
(運が良くて一本とれる、かどうか)
逆にシェーンコップはこの小生意気な年下の中佐をどうやって痛めつけてやろうかと、考えていた。その戦い様によっては、訓練に参加させてやってもいいだろう。だが、よほど酷いようなら、この連隊のビルから叩き出してやるつもりだった。
「ではリシャール中佐、いつでもどうぞ」
彼は気障っぽくお辞儀してみせたのである。
「それでは、シェーンコップ中佐、行きますよ」
フロルは引き寄せた戦斧を肩口から叩き付けるように振るう。シェーンコップほどの男が、大上段からの振り下ろしなどという冗長な技にやられる訳はない。
「ほぉ!」
シェーンコップは感心したように呟きながら、それを上体だけの動きで避けて見せた。フロルはその戦斧を引き寄せつつ、上体を低く敵の右前に投げ出した。その上を、シェーンコップの横薙ぎにした戦斧が風を切った。さすがシェ
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