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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
会議が招いた再会
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「悪いナ。いくらオイラが見つけた金の卵のマー坊でも、その依頼を受けることはできなイ」
「……そうか、ならいい」

 朝の日差しがトールバーナの町全体を照らし出した頃の路地裏でマサキがそう言うと、アルゴは「すまないナ」とだけ言った。
 常にふてぶてしく、情報とあらば自らのステータスでさえ売ることを(いと)わないという商売根性を持つ彼女がこのような言動をした理由は、マサキが彼女に収集を依頼しようとした情報の内容にある。

 マサキは以前、はじまりの街でキリトと行動を共にしていた際に、彼からいくつかの情報を聞きだしていた。《ナイトウルフ》を狩るクエストなどがその代表例である。
 しかし、その情報もそろそろ底を突いてきた。可能ならば新しい情報を仕入れたいのだが、誰に聞けばいいのか分からない。唯一連絡がつき、なおかつ元βテスターだということが判明している存在としてキリトがいるが、果たして彼がβテスト時にどれほどのプレイヤーだったのかが疑問に残る。
 そのため、アルゴに“信頼できる元βテスターを紹介してほしい”という内容で依頼をしようと考えたのだが、あろうことか拒否されてしまった。アルゴ曰く、「こいつは誰にも譲れない情報屋としての掟ダ」ということだ。マサキは昨日のキバオウに代表される“βテスター断罪すべし”の風潮を自分が踏襲していると誤解をされたのかもしれないと考え、βテスターを恨む気はないことと、自分が持ちかけているのは公正な取引であり、情報には料金を払うし、もし話したくない類のものであれば拒否してくれても構わない旨を伝えたが、それでも彼女の首が縦に振られることはなかった。
 マサキがこれ以上の交渉は無意味と判断して路地裏から出ようとすると、「ちょっと待ってくレ」と呼び止められた。マサキが振り返ると、アルゴの小さな手の上に初日に貰った本と同じデザインだが圧倒的に薄い、どちらかといえばパンフレットのような冊子が二部、乗っていた。

「これは?」
「“アルゴの攻略本 第一層ボス編”サ。本当は、配布は今日の夕方ごろからの予定だったんだが、マー坊とトー助にだけ特別ダ」
「そいつはどうも。ありがたく頂戴させてもらう」

 マサキはアルゴの手に乗っていた二冊の冊子をポーチに入れると、今度こそ路地裏を出て、表通りへと姿を消した。


 マサキはアルゴと分かれて表通りへと出ると、そのまま近くの武器店へと向かった。位置関係的にはマサキが今までいた場所と正反対に位置する店だったが、トールバーナの町自体がはじまりの街と比べるとかなり小規模なため、急がなくとも数分で辿り着き、店先で剣を眺めているライトブラウンの頭を発見できた。マサキが声をかけようと肩に手を置くと、突如目の前の体がビクッと大きく跳ね、体ごと頭がマサキに向き直る。

「何だ、マサキか。
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