戦いの裏で
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。これだけの人数の子供の将来をねじ曲げる戦争。その愚かさが分かるというものだった。
「ん?」
その中でフロルはある名前を見つけた。
??Katerose von Kreutzer、Female、Age:8??
この名前は、カリンだった。シェーコップの落とし胤。最後まで実の父を受け入れられなかった頑固者。もう8歳にして母親を失っていたのか、とフロルは愕然とした。
フロルの驚いた顔に、キャゼルヌもまた驚いていた。普段は冷静な男、という評判を獲得しつつあるというフロルが狼狽しているのだ。キャゼルヌもまた、書類に目をやる。
「キャゼルヌ先輩」フロルは唸るように言った。「この子を引き取ってもいいですか」
フロルが指差したのはカリンの名前である。
「む? カーテローゼ・フォン・クロイツェル? この名前から言うと、どうやら帝国からの亡命者のようだな。だが女の子だなぁ。一応原則、男子は男性士官の家に、女子は女性士官の家に、ということになってるんだが」
「いや、頼みます、先輩」
なんとフロルはそこで頭を下げたのである。キャゼルヌはその気迫に押されてしまった。いったいこの娘はなんなのだ。
「だが、フロル、おまえ、この娘を知ってるのか?」
「いや、知らない……、だが頼む」
キャゼルヌはそのフロルの様子にただならぬものを感じていた。
そしてフロルもまた、この孤独な少女を、どうにかして救いたいと考えていた。
この子はこのまま行くと、父親との和解を得ることなく、何よりその自身の性格に苦しめられることになるだろう。原作の最後では、ようやくユリアンとも打ち解けたはずだったが、それでは遅すぎる。どうにかしてこの娘を父の死より早く、和解させてやりたい。フロルは前世よりこのカリンという少女が好きだった。だが同時に彼女の苦悩に心を痛めていたのだ。もしも幼少期、母を失ったあとに、誰か心ある者に育てられたのならば、彼女はあんなにきつい性格にならなくとも済んでいたはずなのだ。ならば、俺がどうにかする、そうフロルは決心していたのである。
「うむ……だが写真があるわけでもないのに、おまえさんはいったいなにを見てそう思ったんだか……」
キャゼルヌはこれでもフロルという男を知っているつもりだった。だが時たまこの男は俺の予想や想像を超える、とも思っていた。彼は女性を好むという意味で通常の男性であったが、少女を特に好むという性癖でもなかったし、美女を好む、とは知っていたものの、美少女に発情はしないことも知っていた。ましてこの資料には写真がないのである。美少女かどうかなど、わかるはずもない。キャゼルヌ自身ですら、知らないのであるから。だがこの男はたった一行の名前から何かを読み取った。キャゼルヌは頭の中の掲示板に、この少女の名前をピンで
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