アルレスハイム星域会戦
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な時には喋るようじゃ」
「いえ、私は口下手なもんで……。下手に喋るといらんことまで口にしてしまうのですよ」
フロルの発言に、また幾人かはそれを笑ったが、他の大多数は今の発言の意味を噛み締めていた。我が軍はもしかしたら敵の罠に飛び込んでいるのではないか。さきほどまでは『敵の奇襲』自体を罠、と思っていたが、もしかしたら『奇襲が罠である』という思い込みこそが敵の望む策略ではないのか、と思い至ったのである。
「では貴官はどうすればいいと思う」
「せっかくですから、罠に飛び込むのがいいかと」
「なに? それでは大多数にやられるだけではないか!」
「この場合、何が一番不味いかというと、後方を遮断された後、その後方の敵に構っている間に、小惑星群の中からも攻撃される事です。ですから後方を遮断されたならそのまま直進し、小惑星群を抜ければいい。この場合前方で待ち構える部隊を殲滅すればいいいだけなので、それは容易いでしょう。そして改めて障害物がない宙域で戦線を構築すれば良いのです」
「もしも敵が一カ所に固まっていたら、どうなるのだ」
「その場合、敵が少数である、という敵にとって有利なはずの情報操作が意味を失います。ですから敵はまず確実に兵を分けて来るでしょう」
フロルは手元の紅茶を一口、口に含む。
「そして兵力を分けて、我々を待つならば、それは小惑星群内部を戦闘宙域に決定した、という事に他ならない。開けた場所で兵力を分割するなどというのは、各個撃破の好餌だからです。しかもここはアルレスハイム、開けた場所は小惑星群の両端だけです」
「貴官は小惑星群を抜ければ良いと容易く言うが、抜けた先はイゼルローン回廊出口に近い。もしそこに別の兵力があったらどうする?」
参謀長が声を上げる。
「敵がアルレスハイムを戦場に設定したのは、小惑星群を舞台にすると決定したのと同義です。彼らは小惑星群の中で我々と戦う作戦を立てているのだから、その作戦を失敗にするには小惑星群を駆け抜けること。彼らは我々を小惑星群に閉じ込めることに全力を尽くすでしょうから、外部に兵力を残すことはしないはずです。彼らは時間差で奇襲を仕掛け、包囲しようとするでしょうが、つまり彼らの予想より早く動けば包囲が完成される前に突破できるということを意味します」
「ふむ……」
目を閉じて考え込んでいたビュコック提督が目を開けた。
「どうやらリシャール少佐の意見に穴はなさそうじゃな。では我々はまず小惑星群を敵を撃滅しつつ突破し、抜けた先で戦陣を構築。敵の後続部隊と残存奇襲部隊を相手にするか」
「そこでもう一つ提案があります」
ビュコックは品定めをするような目でフロルを見た。
「今回、小官は出発に当たり、工作船を通常の艦隊構成より多めに配備しました」
「あ、工作船が多いと
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