アルレスハイム星域会戦
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ビュコック提督、何かご意見は?」
「我が艦隊は敵からの奇襲に備えつつ、小惑星群に侵入する。障害物が多いので索敵には困難が伴うと思われるが、他に有効な手段がない以上、こうするしかないだろう」
ビュコック提督の言葉に周りの参謀が頷く。常識的に考えて、そうしかありえないだろう。フロルは会議室にいる人々のマグカップに紅茶を入れながら、頭を巡らす。
艦隊数が特定できていないのが引っ掛る。敵艦隊の数は不明だ。もし敵が少数ならば、敵は奇襲を持ってその数の少なさをカバーしようとするだろう。だが、もし??
「提督、意見を申してもよろしいですか」
ちょうどポットが空になった時、フロルが声を上げた。その声で、周りの人間もさきほどから自分たちのカップに紅茶を入れて回っていたのが、作戦参謀の少佐である事に気付いたようであった。
「リシャール少佐、言ってみたまえ。君も作戦参謀じゃろうに」
「すみません。最近では自分がお茶汲み係か何かではないかと、自分でもわからなくなる始末で」
その発言に周りの人間が苦笑する。
「今回、敵の艦数が少ない場合、敵のとる戦法は一つです。つまり小惑星群に潜んで敵がやってきたところを撃つ、という奇襲です。今回の我々もそれを想定して動いております」
「ふむ、続けたまえ」
「ですが、もし敵艦隊が我が艦隊より多い場合でも、敵がとる戦法は奇襲作戦である、と小官は考えます」
その発言に周りの人間がざわめく。
「そもそも大前提である敵艦隊の規模を疑っているわけかね。精確に把握できていない以上、それを前提に動いていることの危険性を考慮すべき、ということか」
「はい、提督」
フロルは内心で舌を巻いていた。どうやらビュコック提督自身、このことは考えていたようだ。
「我々が敵の艦隊数を少ないと想定しているなら、我が軍は小惑星群に潜んでいる敵をこちらも潜り込んで叩く、という戦法をとるだろうと敵は予測しているのです、論理の帰結として。そしてそれを考慮した上で、我が軍より多い艦数を用意しているのであれば、小惑星群に我が軍が侵入したあと、後方より奇襲をかけ我が軍を小惑星群に押し込み、さらにそこを奇襲するのではないか、と思われます。仮に敵が同数であっても、敵はそれを過小に見せることで、その情報をアドバンテージにしようとするでしょう」
「つまり、敵の艦数が少ない、という情報がおかしいというのかね」
「我が軍は先の788年、イゼルローン回廊外における遭遇戦で敵分艦隊を撃滅した戦果があります。仮に敵が4年越しの復讐戦にやってきたのであれば、我が軍の艦隊13000隻よりも少ない艦数でそれを行うとは思えません」
「なるほど、なかなかに論理的じゃな。雄弁でもある。普段は茶を入れてばかりで、まともな会話をした記憶がないが、貴官は大切
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