ビュコック提督
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に暗い思いを抱いているであろうことを知っていたから。
(この男は、それを示しにきたのか。わざわざ手作りのケーキまでこさえて)
そう考えると、随分愛嬌のある人物ではないか。ビュコックは小さく笑った。
昨日の着任の時には、士官学校出のエリートとしか見えなかったが、ずいぶんと気を回す男らしい。案外、いい拾い物だったのかもしれぬ。それに妻もお土産を喜んでいる。それに免じて、多少は可愛がってもいいのではないか。
「少佐、もう良い。わかった、貴官の言いたいことは理解したよ」
「恐縮です」
フロルは素直に頭を下げた。
「まぁ今日は時間も遅い。良かったら夕食を一緒にどうかね?」
「非情にありがたいお申し付けですが、奥様にご迷惑ではないでしょうか」
「なに、君もキッチンで手伝えばいいだけのこと。何か美味いもんでも作ってくれ。ケーキも美味かったことだしな」
フロルは少し考えると、何かを思いついたように顔を上げた。
「では、シチューを作ってもよろしいですか? 先日、美味しいシチューの作り方を習ったのです」
そして、フロルは夜遅くにビュコック宅を辞したのである。
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「はい、提督。シロン産アールグレイ、レモンティーです」
「うむ」
その後、一年半の間に、ビュコックは位をに中将に昇進させ、晴れて第5艦隊の艦隊司令となった。そしてフロルはそこの参謀でありながら、日々ビュコック提督の紅茶を入れる係を、仰せつかっているのである。
年は宇宙暦792年。ビュコック提督率いる第5艦隊は、アルレスハイム星域に差し掛かろうとしていた。
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※訂正※
ビュコック提督の階級:中将→少将
ミンツ中尉→ミンツ大尉
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