790年の昇進
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たパストーレの艦隊に配属になるのではないか、と思っていたのだが、良い意味で宛てが外れた。
俺はその足でキャゼルヌ大佐(いつのまにやら中佐から昇進していた)の部屋に行こうと思ったのだが、シロンからのお土産を持って来ていなかったので、諦めた。どうせならあとでヤンか誰かを誘って、先輩の家に行けば良い。キャゼルヌ夫人の料理は、それはそれは美味しいものだったのだから。さすがのフロルも一目をおく腕前である。もっとも、菓子作りについてはフロルに一日の長があるのだが。
統合作戦本部ビルの廊下を歩いていると、後ろからフロルを呼ぶ声があった。フロルが振り向くと、ジャン・ロベール・ラップである。左手を軽く上げて、駆け寄ってくる。
「おお、ラップ! 久しぶりじゃないか」
「先輩こそ、お久しぶりです。お元気そうですね」
「まぁな。シロンはなかなか穏やかなとこだったぜ」
「私はそれなりに忙しかったですよ。ようやく艦隊任務が一区切り付いたとこです。今度昇進して大尉になります」
「おお、よかったな。さすがラップだ。おまえとヤンは出世すると思ってたからな」
ラップは少し恥ずかしそうにしていたが、その能力からすれば正当な評価というところでだろう。有能な人材が正当に評価されないところから組織の弱体化は始まるが、まだその部分は辛うじて正常というところらしい。ヤンもその階級に恥ずかしくないだけの実力はあるのだが、いかんせんエル・ファシルの一件だけで少佐である。フロルの24歳少佐昇進ですらかなりのペースだが、ヤンはやはり常識外と言わざるを得なかった。もっとも、軍事的才覚はヤンの方が何倍も上なのだから、それは僻んでも羨んでも意味のないことだろう、とフロルは考えていた。
「フロル先輩ももうそろそろ昇進じゃないんですか?」
「今、辞令を受け取って来たよ。少佐だと」
「おめでとうございます!」
ラップは嬉しそうに笑う。こういう気の良いところが、ラップの人の良さである。もっとも、良い奴すぎて、もうちょっと酸いも甘いも噛み分けられなきゃ、早死にしそうな性格である。もっとも、そうは俺がさせないが。
「これからキャゼルヌ先輩のところですか?」
「いや、あとであいつの家に押し掛けてやろうと思ってな」
「そいつは名案ですね。俺はまだキャゼルヌ夫人の手料理というのを頂いてませんのでね。できるなら一度行きたかったのです。そういえば先輩は、ハイネセンにはいつ?」
「昨日だ。おみやげを忘れて来てね、それを持ってこなきゃならんから、一度家に帰る」
「家も引っ越しですね」
「そうか、佐官待遇だと官舎もグレードアップか」
そういえばヤンも少佐になったとき、家が変わった筈だった。
「それじゃあ今夜、キャゼルヌ先輩の家でお会いしましょうか」
「ああ、あとで俺が電話
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