新たなる任地へ
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閉じろ」
「ははは、フロルもどうやら春が来たみたじゃないか」
キャゼルヌはフロルとイヴリンの様子を見て何を勘違いしたか、そんなことを言った。フロルも自分を客観視してみて驚いた。確かに、他人から見ればこれはいちゃついているように見えるのではないか、と気付いたからである。それは明らかに不本意な話である。確かにイヴリンは疑いようもない美人だが、このように気の強い女性は願い下げなのだ。
「それはどうでもいいが、キャゼルヌ先輩も結婚するんでしょう?」
「おい、なんでそれを知ってるんだ」
「聞いてますよ。元上官の娘さんでしょう? 綺麗な人と聞いてますよ」
「まったく、おまえさん時たま人を驚かせて、それを楽しむ悪い趣味があるな」
イヴリンは隣で「残念」と呟いていたが、それに気付いた者はいなかった。
「いつ頃、結婚するんです?」
「来年の2月頃になるだろう」
「わかりました、その時にはハイネセンに戻って来ますよ」
「おいおい、今は10月だぞ。赴任早々帰って来れるのか」
「親の危急とでも言って戻って来ますよ」
フロルは肩を竦めた。
「あなたのお祝いをしたいわけではないですが、あなたを夫に持つ哀れな女性に労いの言葉をかけてあげたいのでね」
イヴリンはここで小さく笑った。
「ヤンは閑職に回されたわけだが、俺がどうにかして戻してやろうと思っている」
キャゼルヌは頭をかきながら言う。
「ええ、そうしてやってください。私は大人しくしてようと思いますよ。まぁあそこは賑わっているだろうから、せいぜい美味しい紅茶のために汗を流しますさ」
イヴリンも特に話したいことはないようだった。穿った見方をすれば、結婚するとわかったからキャゼルヌへの興味がなくなったのかもしれない。そうだとしたら、いったいなんだってそんなに結婚がしたいのか、という話だが。若くて将来有望な男、という彼女の次のターゲットが、一体誰になるのか。鈍感にしても、無意識の作為であっても、それが自分になるなどとは、フロル・リシャールは考えてもいないのである。
それから一週間後の10月14日、フロル・リシャール大尉とイヴリン・ドールトン中尉を載せたシャトルは、首都星ハイネセンを旅立った。
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※訂正※
作戦本部→後方勤務本部
参謀→幕僚
キャゼルヌ中尉→キャゼルヌ中佐
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