暁 〜小説投稿サイト〜
【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
新たなる任地へ
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
正直なところ、原作同様彼女がヤンを巻き込んで船ごと自殺を図る、というのをやめさせたかっただけで、本来はそれ以上の意味はなかったのだ。もっとも、彼女が思った以上に美人だったので、多少の下心がなかったかと言えば、彼は正直言葉に詰まるだろうが。

「それで、俺は守備部隊の幕僚だが、ドールトン中尉の役職は?」
「セレブレッゼ司令官の副官だそうよ」
「セレブレッゼ……、それってシンクレア・セレブレッゼ中将か?」
「そうそう、後方勤務のプロフェッショナル。同盟軍の台所が火の車になっててもまだ機能してるのは、彼がいるおかげっていう話。どんだけ数字に強いのかしら。私も一級航海士の国家免許持ってるけど、そんなレベルの計算とは桁が違うんでしょうねぇ」

 セレブレッゼ中将はこの数年後、ヴァンフリート4=2の戦いでラインハルトに捕獲されるはずの人間である。後方勤務としては一級の手腕を持っていながらも、軍事的才覚には乏しい男だったはずだ。もっとも、フロルやヤンのような男にそれをやれ、と言われても無理なので、その手の人間は軍隊が有機的に機能するために必要不可欠な人間と言えよう。その点、フロルやヤンは潔かった。自分にそれが向かないとわかっているので、それが得意な奴に丸投げするのである。むろん、それなりに信任のおける者に頼むのだが、面倒事はできるだけ減らし、自分の数少ない秀でた才覚が発揮できる機会を逃さない。

「ふーん、じゃあキャゼルヌ先輩に話を聞いてみるか……」
「キャゼルヌって、あの後方勤務本部のアレックス・キャゼルヌ中佐? 凄いエリートじゃない?」
 突然出て来た名前に、イヴリンは驚く。
「そうか、イヴリンの三つ上の先輩か」
「あの人凄かったのよ。士官学校在籍中に書いた論文が??」
「その話なら本人から何度も聞いたよ。スカウトに来たって話だろ?」
「そうそう、でもなんであんたがキャゼルヌ先輩の知り合いなのよ」
「あの人、俺が士官学校時代に事務次長としてやって来てね。以後仲良くしてもらってるのさ」

 フロルは肩を竦める。毒舌家で、上に媚びるを良しといないことから中央部よりは煙たがられているが、後輩の面倒見がいい、非常に付き合っていて気持ちのいい男だった。何より彼の卓越した事務処理能力がある限り、彼は出世街道から外れることはないだろう。

「ねぇ、会いに行くの?」
「時は金なりに、だからな。早めに行くつもりだが」
「じゃあ私も一緒に行かせてよ」
 イヴリンはホールケーキをあと2口のところまで食べていた。いつも思うのだが、イヴリンの菓子を食べる速度はとてつもなく早い。

「いや、別に……来る必要はないだろう」
「いいじゃない。この前の話だって、キャゼルヌ中佐が助けてくれたんでしょ?」
「それを言っちゃダメだって。アレは裏で処理した
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ