外伝 マドレーヌ
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は父だった。
「久しぶりだな、不良息子」
「何を言いやがる、このクソ親爺」
「こらこら、やめなさい二人とも」
この流れはいつも変わらない。二人は会うといつも喧嘩ばかりしているのである。そして母がそれを止めるのだ。
その父の後ろからニーナが顔を出す。
「久しぶり、ニーナ」「おかえり」
私と姉が彼女に声をかけた。
「久しぶり、ユニス姉、キャロル姉。父さん拾ってて遅くなっちゃ……た……」
ニーナは言葉の途中でどうやらフロルという男に気付いたらしい。思い返してみれば、ダスティの4つ上ということは、私の一つ下、ニーナの一つ上ということになる。それにしてもニーナのあの表情は何だろう。顔を赤らめ、目が心なしか潤んでいるように見える。
「ニーナ?」
「えっ、あ、何?」
「この人はダスティのお世話になってる先輩の??」
「フロル・リシャールです。よろしく」
彼はわざわざ席を立って名乗った。ニーナはぼぅ、っとした顔でそれを見ている。あの顔は!
(なんてこと……ニーナの悪い癖がまた発症したのね)
ニーナには惚れやすい、という非常に面倒で困った癖があったのだ。
「ほぉ、君がフロルくんか」
「はじめまして、ダスティの父上で、新聞記者のパトリック・アッテンボローさんですね」
「いかにもそうだが」
フルネームで尋ねられた父はちょっと不思議そうな顔をした。
「ちょっと、お話があるんですが」
彼が父とともに書斎に籠って話をしている間、私たちは焼き上がったマドレーヌを食べることにした。どうやらユニス姉がマドレーヌを作っていると、横からあのフロルという男が自分も作りたいと申し出たのだという。
「おおおお」
出来上がったマドレーヌはどちらも素人けだし、上手いものである。
「じゃあ私は先にユニス姉の頂くわね!」
私は懐かしいそのマドレーヌを手に取った。まだ熱い。ほくほくで口に運ぶと、なんとも言えない美味しさが口の中を広がった。
「ん〜、美味しい!」
「じゃあ私はフロルさんのを頂くわ。作ってる最中から、ずっと気になってたから」
母はその横からフロル作のマドレーヌに手を伸ばした。私も2つめはそちらを食べよう。ユニス姉もそちらを食べたようだ。
だが、食べた二人が固まった。
「え? どうしたの? まずいの?」
フロル作のマドレーヌを口を開けて食べる寸前だった私は、思わずそう聞いた。横のニーナも慌ててそちらのマドレーヌを口に含む。すると、目を見開いて驚いた表情。
「「「美味しい!!!」」」
三人の口から出たのは、絶賛の言葉だった。
一人遅れた私もそれを食べる。
一口食べて驚いた。口の中に広がるきめ細やかな甘み、甘いのに甘過ぎない上品さ、そして微かに広がるマロンの香り、それでいてふっくらとして
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