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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
外伝 マドレーヌ
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ら出てきて挨拶をした。明らかに順序がおかしいと思わざるを得なかったが、さきほどのこのフロルという男の真剣な顔は、それを諌める声を失わせる何かがあった。

「はじめまして、次女のキャロル・アッテンボローよ」
「どうも」
「フロルさん、お料理上手ね」
 今は紅茶を飲みながら、のほほんとしたユニス姉が言う。姉は私たち三姉妹でダントツに料理が上手かったのだから、その姉をしてこう言わしめるというのは、相当な腕なのだろう。だって……あれ……姉はよくも悪くも天然で、お世辞というものを知らない人だからね。

「料理というか、お菓子作りが趣味なもんで」
「相当な腕よ。私だって負けちゃいそうだもの」
「恐縮です」
「それは凄いわね」

 褒められたフロルはどこか恥ずかしげに笑う。ほぅ、よく見ればこの男、なかなかの美男子じゃないか。もうちょっと雰囲気に鋭いものがあれば、かなり映えそうである。髪は薄い茶色。目は透き通った水色で、身長は185くらいだろうか。整った顔立ち、その体は既に軍人として必要なだけ鍛えられていると言った感じで、さきほどまで姉と並んでマドレーヌを作っていた人間には見えない。もっとも、筋骨隆々というほどでもなく、まるでしなやかな弓を思わせる体だった。

「まぁ男ばかりの士官学校に言ってますからね、あまり披露する機会がないのです」
「でもなんでまた、今日は私たちのうちに?」
「いや、ダスティが実家に帰るって聞いたので、面白そうだと思いましてね。付いてきてしまったわけです。ご迷惑でしたか?」

 いえいえ、そんな、と女性一同。そういえば、ニーナはまだ帰ってきてなかった。もしかしたら車で父さんを拾って帰ってくるのかもしれない。

「にしてもダスティ、随分美人な姉を持ってるじゃないか」
「やめてくださいよ、先輩。こう見えて男には怖い姉なんですか……ら……」

 ダスティは私の笑みの裏に込められた意味を、違うことなく理解したらしい。その減らず口が大人しくなり、彼の顔は真っ青になった。冷や汗まで出ている。

「どうした、顔色悪いぞ、ダスティ」
「い……いえ、なんでもありません。アハハハハハ……」
「そういえばフロルさんは士官学校の方だそうですが、どちらの科にいらっしゃるのかしら?」
 ユニス姉が聞く。
「私は戦略研究科に在籍しておりました」
「あら、ならエリートさんなのかしら?」
「どうでしょう、私より優秀な人間はごまんといるでしょうね。もっとも、負けるのが嫌いな性分ですから、あまり負けたことはないですよ?」

 彼はそういうと紅茶に手を伸ばす。そうか、彼の髪は透き通った紅茶の色なのか。
 そのとき玄関からドアが開いた音がした。どうやら父か、ニーナが帰ってきたらしい。

「ただいま」
 最初に入ってきたの
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