第一部第四章 若き獅子その二
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報を待っているだけだ」
彼は笑顔で言った。
「それでは食事にしないか」
丁度お昼時であった。
「今日は地球産の鶏を焼いてスパイスで味付けしたものだ。マウリア風らしいぞ」
「ほう、マウリア風ですか」
マウリアの料理はスパイスをふんだんに使ったものが多い。そして独特のカレールーは人気が高い。
「それでしたらご一緒させてもらいますか。私は自国のものとマウリアの料理が大好きでして」
彼はとりわけ細長くサラサラした米が好きである。
「うん、では食堂に行こう」
二人は食事を採った。そして午後も選挙に対する分析を行なった。
そして選挙投票日となった。投票日まで激しい議論が交わされテレビやネットはこのことで話題がもちきりであった。
投票結果が発表された。三国共僅差であったが賛成派が勝利した。
「これで決まりだな」
キロモトはテレビでそれを見て満面の笑みを浮かべた。
新たに発足した三国の政権はどれも中央軍への参加を公式に宣言した。そして残る国々もそれに続いた。こうして連合の各国の軍隊は全て中央軍に編入されることとなった。
「これで全ての国の軍が中央政府の中に組み入れられたわね」
伊藤はシンガポールにある少し洒落た日本食のレストランで食事を採りながら向かいに座る八条に対して言った。
内装は日本風である。二十世紀頃の日本の料亭をイメージしたらしい。木の椅子やテーブルは白っぽく料理は箸を使って食べる。連合の食事はフォークとナイフ、スプーン、そして箸を同時に使うことが多いが日本食は箸のみで食べるので非常にユニークな料理として知られている。
「はい。ようやく全員揃ったというところでしょうか」
八条は地球の大西洋で採れた海老の天麩羅を天つゆに入れてそれを口に入れた。口の中に衣のカラッとした歯ざわりが満ち海老の弾力が歯に伝わる。
「そう、色々なメンバーがいるけれどね」
伊藤はカルフォルニア産の鮭の刺身にワサビ醤油を漬けた。そしてそれを食べる。鮭のあの脂っこくそれでいてトロリとした味が口の中を支配する。
「これは大変なことよね。人類の歴史史上最大規模の軍隊が突然現われたのですもの。そしてその構成員はどれもこれも一癖も二癖もあるのばかり」
「はい」
しかも装備も編成もバラバラであった。
「それを纏め上げて再編成するのは大変よ。これは骨が折れる仕事になるわよ」
伊藤は八条を悪戯っぽい眼差しで見た。
「けれどだからこそやりがいがあるって思っているでしょ」
彼女はそこで微笑んでみせた。知的でその中に優しさを含んだ笑みである。
「はい。今何から何まで私のところに仕事が来て目が回りそうですけれどね」
それは嘘ではなかった。親切された国防省は今不眠不休で働いている状況である。
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