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MUV-LUV/THE THIRD LEADER(旧題:遠田巧の挑戦)
18.初陣U
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 キメラズが隊列を組んで一斉射を開始し、射線上にいるBETAを攻撃する。撃ち砕かれるBETA。しかしその歩みは止まらない。撃たれながら前進し、倒れたBETAを踏み越えて迫ってくる。みるみる中隊との距離が詰まっていった。
 しかし無理をしなければ問題ない。基本的には距離を取りながら戦えばいいのだ。
『全機500後退!』
 周防の合図で一斉に交代するキメラズ。突撃級を平らげ、光線級も要塞級もいないBETA群を殲滅するにはただ後退しながら敵を削ればよい。セオリー通りの戦法だった。
 その後、接敵と後退を数回繰り返し、あっけなくBETA群は殲滅。巧は死の八分を乗り越えた



 巧は死の八分を簡単に乗り越えたことに喜びよりも戸惑いを感じていた。最初の突撃級こそ夕雲の高いスペックを生かして殺したものの、後はカモ撃ちだった。訓練兵でも簡単にできることだ。正直言って肩すかしを食った思いだった。
『新任共、良くやった。思ったより簡単だったろう?訓練通りやれば恐れることはない。』
 隊長からのねぎらいの言葉。それを聞いて巧はやっと現実に帰ってきた気がした。
「思ったよりあっさり終わりましたね…。」
『そうだ。戦闘の多くは当たり前のことを当たり前にこなせば無事に終わる。死の八分というのはそれが出来ないものにとっての壁だ。その点今回の戦闘は上出来だ。これを数回繰り返せば任務完了だ。』
 それを聞いて巧を含む初陣組は安堵する。周防が初陣組を気遣って言ってくれているのは分かる。訓練校で聞いた話も、シミュレーター訓練で戦ったBETAも容易いものではなかった。恐らく未だ知らない困難がこの先待ち受けているのだろう。しかしそれでも自分達は死の八分を乗り越えた。多くの衛士が越えられなかった壁を乗り越え一人前になれたのだ。生き残った衛士なら誰もが思うことだ。責めることはできなかっただろう。絶望的な任務だと思っていたが案外あっさりこなせるかもしれないと―。そんな甘い幻想を抱いてしまったことを。



 岩崎は部屋で瀬崎からもらったワインを煽りながら、端末に送られてくる戦況を見ながら顔をしかめた。このワインは憎たらしい遠田の小僧が死ぬことを祝う祝杯になるはずだった。それが蓋を開けてみれば簡単に死の八分を乗り越え、隊の損害も無し。岩崎にとってはつまらない展開だ。
 キメラズが全滅すれば試験は終わる。インドから去り、瀬崎の伝で米国に新型のデータを渡してしまえば後は米国で悠々自適の生活だ。
「詰まらん…さっさと食われてしまえば楽なんだがな。」
 思わず本音が零れる。自室とはいえここは帝国軍がいる基地である。こんなことを聞かれた日には闇討ちされかねない。特に今は瀬崎の誘いに乗って米国に寝返った身。普段から気をつけなければならない。何気なくつぶやいた一言が身を滅ぼ
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