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MUV-LUV/THE THIRD LEADER(旧題:遠田巧の挑戦)
17.初陣T
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う。あいつは国や世界なんてものに興味はないだろうし、優越感に浸れる環境を用意してやれば簡単に転ぶだろう。
瀬崎side out
◆
岩崎の後を追いかけ瀬崎は声をかける。にこやかで友好さを前面に押し出した表情。CIAのスパイとして帝都に潜り込む際に徹底的に仕込まれたものだ。
「岩崎参与、少し時間をいただけますか?」
「くどいぞ!決定は変わらないと言ったはずだ。これ以上邪魔するなら懲罰を与えるぞ!」
「いえ、別件です。ここでは話しにくいことなのですが…。」
「何故私が貴様の話を聞かねばならん?」
岩崎は早く色街に出かけたい様子。それを見とると瀬崎は心の中で舌打ちをしながら交渉を始めた。
「岩崎参与にも旨みがある話ですよ。そうですね、参与の部屋に酒でも持って伺います。今は亡きボルドーの30年物です。湿度や温度の管理が難しく少々味は落ちていますが、日本のワインより遙かに上等です。どうですか?」
帝都で諜報活動をしている過程で米国経由で手に入れた高級品で自分で飲むつもりでいたが背に腹は代えられない。瀬崎は酒と女に目がない岩崎の嗜好からこれなら話を聞かせることができると踏んでいた。
一方で岩崎は瀬崎という男を計りかねていた。もし瀬崎の言うことが本当なら滅多にない機会だが、相手の腹が読めない。実戦試験の話でないなら何なのか。ヨーロッパの高級酒はEU戦線が崩壊して以降は非常に高値で取引されている。収集家に売れば10年は遊んで暮らせるほどのものだ。それを空けてまで聞かせたい話とは何か…。
「それは素晴らしいな。しかしそれが本当なら貴様の話を聞くまでもない。酒などの嗜好品を持ち込むことは軍法に反する。没収することもできる。」
「ごもっともです。しかし私の話を聞き入れてくれれば酒よりももっと素晴らしいものを差し上げることができます。いかがですか?」
「ほう…。」
そこまで聞けば岩崎にも瀬崎の持ちかける話が読める。おそらく違法な取引だろう。キメラズとは色々な言葉で飾っても厄介払いのために結成された死兵部隊。この部隊にいるということは大なり小なり後ろ暗い部分があり、このままいけば実戦試験という名の処刑が待っているのだ。
当たり前だが瀬崎は死にたくないのだろう。そのための交渉を裏ルートから来る利益を材料に持とうとしている。
これはチャンスかもしれない―。岩崎はそう考えていた。帝国に尽くしてももう自分が浮かび上がる機会はない。一族の威光ももはや薄れた。一族の顔に泥を塗った自分はもう一生帝国に飼い殺しにされるだろう。ならばこの話に乗ってみるのも悪くはない。
「良いだろう。ついてこい。」
この日、岩崎は完全に帝国に見切りをつけた。米国での豊かな暮らしと酒と女。それを瀬崎から受け取る代わりに、実戦は『特殊任務』を与えることで回避
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