第三幕その四
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初
ゼンタがオランダ人を見る中で必死に皆に声をかけ続けている。
「亡霊が!亡霊が!」
「ゼンタ、行くな!」
「恐ろしいことになるぞ!」
「見て、あの船!」
マリーが蒼ざめた顔でオランダ人の船を指差した。そこにあるのは。
黒い漆黒のマストが高々とありその帆が赤い血の色になっている。青白い炎を宿らせたその船を。今その船の錨が掲げられた。
「さあ、出港だ!」
「いえ、なりません!」
船に飛び乗ったオランダ人に対して叫ぶ。
「貴方の天使の心を御覧下さい!」
港の一際高い場所、岸壁にその身を置いた。
「私はここで貴方に死までの貞節を誓います!」
「ゼンタ!」
「ゼンターーーーーーーーッ!」
エリック達の声も聞かず一人その岸壁から身を乗り出した。すると嵐が起こり海を荒れさせる。その中にオランダ人の船だけが沈められる。そしてその嵐が一瞬で消えて何と海の中から船が浮かび上がる。船は高々と空に昇っていき天界へと消えていく。全ては救われた。遂に永遠の貞節がさまよえる男を救い出し彼を天国の平和へと誘う。エリック達はただその光景を見ているだけだった。暗雲を裂いてそこから覗き込む黄金色の光に導かれ空を昇るオランダ人の船を。救済が適えられたのを見ていた。
さまよえるオランダ人 完
2008・6・6
[8]前話 [9]前 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ