第十九話
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
宇宙船ウルスラグナの乗組員達の協力を得てエルシャンはNASA長官と対談に成功する。
だがそこに至るまでは当然のことながら簡単ではなかった。ケネスを始めとする乗組員達の報告は最初信じてもらう事は出来なかった。
現在ウルスラグナが静止軌道上にいると報告するなり、テキサス州はヒューストンにあるジョンソン宇宙センターの30&30S内ミッションコントロールセンターから『ふざけるな!』という声が無線を通さずに届きそうな勢いで怒鳴られたくらいだった。
突如として丸1日以上の間あらゆる通信を絶ち、最悪のケースすら想定された今回の事件で、やっと通信が回復したと思えば、当人達からから出たのは出来の悪い冗談のような話。休む暇も無くコントロールセンターに詰めていたスタッフ達としては当然の怒りだろう。
結局、彼等を納得させる決定打となったのは、ケネスの「俺達と普通に会話出来てるのがその証拠だろう」という一言だった。
予定ではウルスラグナと地球とは約1億2000万km(約400光秒)離れており、会話をするには自分が発言してから相手の返答を13分以上は待つ忍耐力を求められるはずだったが、昔の衛星中継程度のタイムラグで済んでいる。
そのことに気付いたコントロールセンターのスタッフ達は、一旦冷静さを取り戻すが次の瞬間にパニックに陥ったのであった。
「次はアメリカ大統領と直接対話かよ……」
オバマ政権の2期目から数えて4期目にあたる現在、どんな人物が大統領になっているのか皆目検討がつかないが、アメリカの大統領と聞くだけで日本の総理大臣10人分くらいのプレッシャーを覚えて、エルシャンの中の田沢真治の心の尻尾が逆方向に丸まり股間に入り込む。
エルシャンは軍大学で一級軍政官──占領統治ではなく、対【敵性体】最前線となった国家においては、非常事態に際して星系国家の政府に代わり連盟軍が三権を握り統治を行う──の資格も取得しているが、やはり本物の政治家とは訳が違うのだった。
『ヘイヘイ司令官ビビってるよ!』
「……最近、お前がどんな方向に進もうとしているのか俺にはわからない」
マザーブレインのボケに、エルシャンは冷静に突っ込みを入れる。
『現在、地球の文化・政治など様々な分野の情報を収集するために受信可能な電波を全て解析しており、その成果の一端を披露してみました。また既に主要言語の多くは十分な習得段階にあり、地球言語の翻訳プログラムもほぼ問題ないレベルに達したと思われます。しかし方言などはサンプルが少なく習得率が上がりません』
「……そうか引き続き頑張ってくれ」
方言はどうでも良いだろうと思いため息を漏らして話を打ち切ろうとするが、この後エルシャンの心臓を鷲掴みにするような質問の言葉をマザーブレインは発する。
『その情報収集の結果を踏まえて司令官に
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ