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故郷は青き星
第十九話
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って歩けるようになるには、まだ二ヶ月間ほどこの中での生活を送ることになるようです』
『恥じる必要はありません。名誉の負傷なのですから』
 自分より年長だった政治家達とは異なり朝鮮戦争やベトナム戦争で軍歴が無いアルバン大統領には、名誉の負傷とという言葉に引け目と憧れがあった。
『ただ怒りと憎しみに飽かせて、我が身を省みる余裕すらなく蛮勇を奮ったまでです』
『フルント星のことは聞いております。もし我が身に起きた事と思えば、この老骨でさえ怒りを抑えることは出来ないでしょう』
『お気遣いありがとうございます』
『……失礼だが公使。貴方はまだお若いのではないでしょうか?』
『まだ我々の種族の平均寿命の1/8ほどしか生きていないので若いと言えるでしょう。この星では時間では17歳になります』
 アルバン大統領は想像以上に若かったエルシャンに驚く。
 そして、まだハイスクールの生徒と同じ歳頃の彼が、住んでいた星を失い。家族も友人も、そして名も知らぬ同胞も全て失い。それでも文字通り命を削りながら独り戦い続けていたという壮絶さに息を飲む。
『君は……いや失礼。貴方は、それでもまだ戦う意思を持ち続けているだろうか?』
 相手がまだ少年であるという思いに呼びかけ方を間違えてしまう。
『はい。パイロットとして戦う事はもう出来ませんが。まだ私は軍人です。自分に戦う術が残されている限り戦い続けます』
 魑魅魍魎の政治の泥沼を長年泳ぎ抜き、そのトップにまでたどり着いたアルバンをして気圧されるほどの強い意志の表明。しかしそれ故に懸念を覚える。
『それは復讐かね?』
 アルバン大統領はエルシャンの復讐心が、地球に災いを招くのではないかと恐れを抱く。
『パイロットとしての私は【敵性体】への復讐に命を賭け、そして破れました』
『それでも復讐の炎は消えないのかな?』
『……復讐、その思いは決して消える事は無いでしょう。だから……今、この銀河に生きる1人でも多くの人を救う事が、自分に出来る唯一の復讐。この宇宙を支配する残酷な運命への復讐だと思うのです』
『ふっ運命への復讐か……いや失礼した』
 エルシャンの口から出た余りに青臭い台詞に思わず笑ってしまう。だが悪くない。アメリカ合衆国がこの戦争に加担する理由としては悪くない。そうアルバン大統領は思う。
 アメリカ合衆国という歴史の浅く、多民族の寄せ集め人工国家をまとめ上げるのに必要な『正義』と言う名のスローガン。
 アメリカは正義の名の下に戦う事で国を1つにしてきた歴史を持つ。それは今もこれからも変わることが無いと彼は信じる。
 同じ銀河に生きる同胞達を守るために、星の海を渡り迫り来る巨大な侵略者に立ち向かう……これ以上アメリカ人を心を掻き立てるシチュエーションがあるだろうか? 否無い! とアルバン大統領は胸
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