暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第4章 聖痕
第48話 クーデターの夜
[7/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
瞬間、俺を中心とした空間に発生する、腐った澱んだ大気ではなく、新鮮な空気が供給され、同時に排除される下水独特の臭気。
 そう。ここはおそらく、何処かの都市に存在する地下下水道。殺人祭鬼の連中に取っては、この上ない地下と暗黒の楽園。

 しかし、これで、大抵の状況には対処出来るでしょう。未だ、物理と魔法は一度だけ反射が可能で、雷と風は無効。呪殺も一度だけは無効化が可能。この状態の存在を即死させるのは流石に難しいはずです。
 そうしたら、次はこの地の土地神を召喚して――――――――。

「どうしても進むと言うのですか」

 そう考えた刹那、地下下水道に響く俺と、タバサ以外の第三の登場人物の声。
 聞き覚えのない女声(ジョセイ)。しかし……。

「行くしかないな。あの姫さんには言いたい事が山ほど有るからな」

 地下に関係する場所にのみ登場して来た彼女に対して、俺はそう答えた。何故ならば、別に驚く必要性など感じなかったから。俺は彼女の事を、最初から人ならざる者として認識していたのですから。
 そして、更に続けて、

「信用しているなら、もっと、ちゃんと説明して置け、言うんや。それを、面倒臭い事をして、挙句の果てに攫われていたら意味はないでしょうが」

 ……と、そう独り言を呟くように続けた。
 但し、最初から説明されていたとしたら、ここまで上手く事が運んだかどうかは微妙な線なのですが。何故ならば、俺に出来る策と言うのは、タバサは共に戦場に有りますが、イザベラに関しては後方に置いて、偽物を戦場に連れ出す事ぐらいでしたから。
 相手の力量が判らないだけに、そんな方法では騙せない可能性も有ります。いや、更に厄介な状況に陥っていた可能性の方が高いか。

 その少女。翡翠の色のドレスを身に纏った長い黒髪を持つ少女が、俺の答えに、僅かに微笑った。

 彼女から発せられたのは……。これは、感傷に似た雰囲気。人が懐かしい思い出を語る際に。何か、良い思い出を思い出す際に発せられる気に似ている。

 先ほどの俺の言葉、対応の何処に彼女の思い出を刺激する部分が有ったのか判らないけど、何か心の琴線に触れる部分が有ったのでしょう。

「それで、貴女の事はどうお呼びしたら宜しいのでしょうか」

 取り敢えず、ファースト・コンタクトには成功したようなので、それまでの雰囲気から、交渉時の雰囲気へと様子を一変させた後に、次の質問に移る俺。もっとも、彼女から感じて居るのは土。おそらく、彼女は土の高位の精霊。
 そして、ガリア。つまり、土の王国の守護を担うべき存在でしょう。少なくとも、俺が連れている大地の精霊ノームが発して居る気とは比べものにならない程の土の精気を放つ存在で有るのは間違い有りません。

「私は……ティターニアと呼ばれて
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ