第4章 聖痕
第48話 クーデターの夜
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、……と言う前提条件が付くのですが。
目指すべき階段の続く世界は――――――――。
俺の不安感を募らせる闇と、暴走寸前の魔力が蟠っているかのようで有った。
☆★☆★☆
一歩、階段を進むごとに渦巻く魔力。いや、これはおそらく……
【肯定。これは移動用の術式なのです】
俺の感じた疑問を、即座に黒の知恵の女神が肯定する。流石に、ゲーティア、もしくはゴエティアに記された智慧の魔神と言うべきか。
但し、この手の移動用の術式はリスクが存在していたような覚えが……。
俺は左手に火行を持って為した光を掲げ、右手にはタバサを感じながら、視線は遙か地下に続く階段を映す。
彼女から発せられる雰囲気は、普段の彼女のまま。何事が有ろうとも、彼女が変わる事などない、と言う事ですか。
「タバサ。これは多分、移動用の術式。長距離を、異空間を通過する事に因って短縮する移動用の魔法やと思う」
タバサより二段分先に進みながら、そう、独り言のように呟く俺。
その俺と、蒼き姫を包み込む魔力の渦。いや、それはまるで、形を失った人。かつて、人だった何かを思わせる存在。
そう。ここは地獄の獄卒たちが移動するに相応しい、此方と彼方を繋ぐ異世界の通路。
「この道を進む者のルールはたったひとつ。何が有ったとしても、絶対に振り返ってはいけない。たったそれだけ」
俺は、自身が絶対に振り返る事なく、タバサに対してそう話し続けた。
その俺の瞳を覗き込み、そして、直ぐに後ろに過ぎ去って行く、かつて人で有った何か達。
そう。そしてもし、この通路を歩む際に後ろを振り返ると……。
今、俺とタバサを見つめているヤツラと同じ存在と成り果てる。……だけならば、俺は別に恐れる事は有りません。
この通路が、冥府の通路の属性を持っているのなら、振り返った瞬間に失うのは我が生命に非ず。
イザナギが、オルフェウスが失った物と同じ物を俺は失う事となる。
その瞬間、氷の如き吐息を首筋に感じる。いや、その感覚は首筋だけでは終わる事はない。右肩が。右腕が。そして、彼女と繋いでいるはずの右手が……。
先ほどから、タバサの声に因る答えも、当然、【念話】に因る答えも返されていない。
突如、沸き起こる不安。その不安が繋いだ右手からそのまま右腕。そして、右半身全体を包み込む。
後ろを振り返れ、と、心の奥から何モノかが叫ぶ。
後ろから付き従って来ているのは、彼女ではない。聞き覚えのある声が、耳元で甘く囁く。
しかし……。
俺は、軽く、鼻で笑うように息を吐き出した。
そう。これはクダラナイ小細工に過ぎない。この右手の先に繋がっているのは彼女以外に有り得ない。
「……シノブ」
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