第4章 聖痕
第48話 クーデターの夜
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たよ。囮は高価なほど価値が有る、とね」
そう、俺とタバサに告げながら、イザベラの部屋の扉を開くジョルジュ。
しかし……。
開かれた扉の向こう側は既にもぬけの空。そして、暖炉が有るべき個所に、遙か地下へと続く階段が口を開いていた。
「この先に、イザベラ姫は連れ去られたと言う事か」
何処まで続いているのか判らない、地下への入り口を見つめながら、俺はため息交じりの独り言を呟く。
どうも、最近は地下ダンジョンに縁が有るのですが、それでも、入って行かない訳にも行かないでしょうね。
何故ならば、彼女は、初見に等しい俺を信用している、と言ってくれましたから。
ただ、その台詞を口にするのなら、最初から、俺とタバサをもっと身近に置いてくれて居たのなら、こんな地下ダンジョンに入り込む必要など無かったはずなのですが。
地下迷宮への入り口に等しい不気味な雰囲気を漂わせている階段の入り口から、アール・デコ調の、俺から見るとアンティーク仕様のドレスを身に纏ったタバサへと視線を移す俺。
そして、
「毎度毎度、ドレスアップする度に戦闘に巻き込まれるって言うのも、俺と、タバサには似合っているのかも知れないな」
そう伝えながら、右手を差し出す俺。それはまるで、ダンスを誘うような自然な姿。そして、緊張感に欠ける雰囲気。
普段通りの表情……。そう、表情は普段通りの彼女で間違いない。しかし……。
いや、最初から知って居ましたか。彼女に心が存在している事に関しては……。
普通ならば、危険と判っている場所に、彼女を連れて行くのは避けるべきでしょう。しかし、付いて来るか、それともここに居残るか。その判断は彼女に委ねたのです。
彼女は、間違っても足手纏いに成るような人間では有りませんから。
俺の差し出した右手をそっと取るタバサ。不安などは一切感じる事のない、普段通りの落ち着いた雰囲気。
その、繊手と呼ぶに相応しい左手に彼女の覚悟を感じ取り、ジョルジュの方に視線を移す俺。
「この屋敷の制圧は私と、私が連れて来た西百合騎士団の者たちで行います」
……と、そう告げて来る竜殺し殿。そして、更に続けて、
「タバサ嬢の御母堂は既に安全な場所に移送され、王都に残った東薔薇騎士団の連中も、ジル・ド・レイ卿に率いられた西百合騎士団の者に捕らえられているはずです。
更に、東薔薇騎士団に所属する主だった騎士達の領地の方は、南百合騎士団のランスヴァル卿が制圧を完了しているはずです」
簡単な状況説明を行うジョルジュ。しかし、これでは、東薔薇騎士団の連中が、完全に手の平の上で踊らされただけのように思えるのですが……。
最後の一点。俺とタバサが、無事にイザベラ姫を取り戻して来たら
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