第4章 聖痕
第48話 クーデターの夜
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完全に意識を手放したシャルル・ド・バツ=カステルモールを拘束した後、先ほど閉じたままに成っていた扉を押し開く俺。
瞬間、振り下ろされる黒き烈風。
その烈風が、豪奢な造りの扉を破壊し、そのまま床にサーベルをめり込ませる。
しかし、当たった瞬間に真っ二つに出来ようが、暴風に等しい破壊力を行使しようが、当たらなければまったく意味はない。
そう。扉の向こう側から感じていた隠し様のない人外の気配に、俺が攻撃の有無を考えていない訳はない。半歩後退した瞬間、俺の右手内に発生した七星の宝刀にて一閃。
次の刹那。俺の目の前に、首を失った黒き身体が、その身体と精神に相応しい色合いの体液で床を染め上げながら倒れ込んだ。
「ミノタウロス?」
その倒れ込んだ存在を瞳に映しながら、思わず、そう呟く俺。
いや、むしろ人の体格をした牛の頭を持つ牛頭人と言うべき存在ですか。この相手は、ミノタウロスや牛頭鬼と言うほどの体格を持っている訳では有りませんから。
但し、どう考えても、こんなトコロに牛頭鬼や、ミノタウロスがいる訳はないのですが……。
ここが地獄でない限りは。
しかし、イザベラに当て合われた部屋から一歩外に出た、そのブランシュー伯爵邸の廊下は、現在、地獄にも等しい情景が広がる世界で有ったのは事実なのですが。
軍杖を右手にする一人の青年が、淡い燐光に包まれし身体を優雅に動かす度に、腕を古の舞いを舞うが如く翻す度に作り上げる血風と、死の呻き。
斬り伏せられるは、牛頭人。東薔薇騎士団の制服に包まれし、人ならざる者たち。
憑かれた……。いや、変成したのか?
それとも――
刹那、新たに現れた俺とタバサに対して、三体の牛頭人がこちらに向かって対処を開始する。
良く訓練された、軍人に相応しい動きで……。
濃密な魔が支配する空間内で、最初に接近して来た先頭の牛頭人が、軍杖と言う名のサーベルを大上段に振りかぶった後、無造作に振り下ろした。
剣術の基本に沿った黒き死の顎が俺を両断し、更にその後方に控えしタバサをも巻き込もうとする!
そう、これぞ正に黒き死の奔流!
しかし、あちらが地獄の獄卒牛頭鬼ならば、こちらは神話時代より神を殺すと言う呪を籠められた存在、龍の血を引く者。
まして、所詮は牛頭鬼やミノタウロスを模した牛種と言う程度の存在。
紛い物にはそれに相応しい実力しか持ち得ないのが道理。
留まる事さえなく、半歩右足を踏み込む事でサーベルを何もない空間から廊下へと叩き付けさせ、その場で僅かに腰が沈め、身体を捻じる。
刹那、俺を斬りつけて来た先頭の牛頭人に雷公の腕が振り下ろされた。
声さえ上げる間もない刹那の間に、完全に無力
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