第4章 聖痕
第47話 東薔薇騎士団副長
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王女の顔と雰囲気を湛えたイザベラが、馬車の小窓から顔と右手のみを魅せて、軽く手を振った。但し、普段の彼女に相応しい透明な表情を浮かべたままで。
しかし、たったそれだけの事で、更に彼女の名と、王家を言祝ぐ歓声のボリュームが大きくなる。
その熱狂的な歓呼の声に迎えられて、ポルトーの街中を進む王室専用の馬車。
そして、その響きの中には、欺瞞や追従に満ちた雰囲気を感じる事は有りませんでした。
成るほどね。つまり、ガリアの王室と言うのは、貴族たちからはどう思われているかは判りませんが、少なくとも民衆の支持は得ていると言う事なのでしょう。
そして、その理由も何となく判りますしね。
俺はイザベラを見つめながら、ぼんやりとそう思った。
尚、彼女を見つめても、東薔薇騎士団副長シャルル・アルタニャン卿は何も言いませんでした。
もっとも、イザベラ姫付きのロイヤル・ガード扱いの俺が、彼女を見つめていたとしても騎士団副長に文句を言われる筋合いはないので、この場合は、これで正しいとは思いますが。
それで、ガリア王家が民衆の支持を受けている理由は……。貴族に辛く、民に甘い、と思われる政策を取っているからでしょう。
実際、ガリアの民衆に対する統治機構は中世ヨーロッパとは思えない方式を取っているように思えます。
これは、カジノ関係の事件の時にも感じましたが……。
民衆に対する情報操作を行うなどと言うのは、ナチスドイツのゲッペルスが最初だったと思うのですが……。
そして、貴族に対しては容赦のない鉄槌を振り下ろしているのも事実です。
その潰された貴族の中にはかなり評判の宜しく無かった貴族が含まれていたらしく、そして、その潰された貴族たちの悪評が広まる事により、王家の行いが正しい事を。その貴族達の家を潰す事が、正義の行いで有るかのようなウワサが流れているようですから。
民衆と言うのは、何時の時代で有ったとしても、結構、耳ざとい物ですし、更に、娯楽の少ないこのハルケギニア世界では、ウワサ話と言う物は、庶民に取っての娯楽のひとつと成っているのも事実ですから。
それに、多少不謹慎な言葉では有りますが……、他人の不幸は蜜の味、と言う言葉も有ります。まして、その相手が、身分を笠に着てのやりたい放題を行っていた連中だ、と言うウワサが流れていたとしたら……。
しかし、どうも、その情報の拡散して行くスピードが、中世ヨーロッパの持っている情報伝達速度の常識を超えているような気がしないでもないのですが。
この時代の情報の伝播を担うのは人。活字……つまり、大衆が目を通す新聞が有る訳でもなければ、ラジオやテレビなどの電波を使用した機械もない。この中世程度の
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