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ノルマ
第一幕その一
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ち鳴らすのだ」
「そうすればノルマは」
 ガリア人達はオロヴェーゾの言葉を受けて言う。
「聖なる樺の木を打ち倒すのでしょうか」
「ノルマはきっとそうする」
 オロヴェーゾはまた厳かに告げた。
「きっとな」
「きっと」
「ではオロヴェーゾ様」
 ガリア人達はその言葉を聞いてまたオロヴェーゾに対して言う。
「お告げをノルマに」
「ノルマに届けて下さい」 
 これは彼等の願いそのものであった。
「ガリアの神々よ」
「ローマと戦う我等に対して勝利を」
「このイルスンミルの樺の木」
 オロヴェーゾは自分の後ろにあるその木を振り向いて言う。
「この老木が告げよう、我等の解放を」
「ガリアの勝利を!」
 人々はそれを誓う。その遠くで今ローマの将軍の黄金色の鎧と鮮やかな紅のマントに身を包んだ二人の男が話をしていた。
「フラヴィーオ」
「どうした、ポリオーネ」
 名前を言われた青い目に鋭角的な顔の男が黒い髪と目の端整な男に応えた。その男ポリオーネは見れば左半分が少し歪んではいても実に整った顔をしていた。引き締まりそれと共に非常に整っている。背も高くとりわけ脚が立派な外見の彫刻めいた美貌の持ち主であった。
「これからのことだが」
「どうするのだ、友よ」
「もうノルマのことはいい」
 ポリオーネは言う。
「僕はもうアダルジーザを愛しているのだから」
「馬鹿な。僕は知っている」
 フラヴィーオはその言葉を聞いて顔を顰めさせた。そうしてポリオーネを咎めるのだった。
「彼女と君の間には二人の子供がいる」
「それはわかっている」
 ポリオーネもそれは認める。
「彼女を愛していた。しかし今は」
「アダルジーザを愛しているというのか」
「何とでも言うがいい」
 今度は開き直りの言葉になった。
「それでも今の僕は。彼女だけを見ているのだ」
「彼女はどう言っているのだ」
 フラヴィーオはこれに望みをかけていた。
「彼女が駄目と言えば君は」
「彼女も僕を受けてくれた」
「くっ」
 フラヴィーオは今のポリオーネの言葉に歯噛みした。そうして言い捨てた。
「愚かな。君もアダルジーザも」
「それはわかっている」
 ポリオーネもそれは自分ではっきりわかってはいるのだ。
「しかしそれでも僕は」
「諦めないというのだな」
「夢には見た」
 上を見上げる。自分達の上にある新月を見上げて言う。その暗黒の月を。

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