第一幕その一
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第一幕その一
第一幕 ガリアの怨み
ガリア人とはケルト人のことを言う。今ではスコットランドやアイルランドにいるだけとなっている彼等であるがかつては西欧のかなりの部分に居住していた。ある時はローマを襲い街を廃墟にしてしまったこともある。
彼等はローマ人から見れば野蛮人であり髪の毛を脱色してそれを石膏で上に固めており上半身は裸でその身体を染料で染め戦場では荒れ狂いそれはまるで人ではなかった。そのうえ首を狩り生贄の風習までありそれもまたローマ人達に恐れられていた。彼等とローマ人の対立は宿命的なものでありローマの発展と彼等との戦いは並立するものであった。
その彼等だがやがてローマの組織力と国力の前に敗れていく。ローマはカルタゴやギリシアとの戦いで力を蓄え何時しか巨大な勢力となっていた。これに対してガリア人達は団結が弱く個々で争ってさえいた。そこをローマに突け込まれたりもして何時しかガリア、今のフランスもまたスペインもローマの勢力圏に収められていた。
それを決定的なものにしたのがユリウス=カエサルのガリア統治と戦役であった。彼はその卓越した政治力と戦争を政治に組み込む能力によりガリア人を攻略していった。ここには組織力や土木技術を有効に使うローマ軍の力も大きかった。その彼等の力もありカエサルは遂にガリア人達を完全にローマに組み込んでしまった。これは彼の著書であるガリア戦記にある通りだ。やはりローマ人寄りであるがそれでもガリア人達の当時の状況や風俗習慣、文化に詳しいのは事実だ。ガリア人は完全にローマの中に入ってしまったのだ。
カエサル亡き後も不満は残っていた。これはそうしたガリア人達の話だ。今彼等はガリアの神々の神木であるイルミンスルの木のある林の中に集まっていた。その下に祭壇とドルイドの石がある。そこにガリア人のタートンチェックのズボンや女の白い服を着た者達が集まっていた。そうして口々に言っていた。
「もう我慢できない」
「そうだ」
彼等は言う。夜の林の松明の灯りの中で。
「ローマの支配を退けるんだ」
「そうしてまた我々の手にガリアを」
「待て」
ここで厳かな声がした。それと共に祭壇のところにガリア人の司祭達であるドルイド達が姿を現わす。皆長い白い服を着ているがそれは決してローマのトーガではなかった。ガリアの服であった。
「ガリアの同胞達よ、それはならない」
「今はですか」
「そう、今はだ」
ドルイド達の中央にいる白い髭に顔全体を覆わせその髪を立たせた老人が告げる。彼の名をオロヴェーゾといいこの部族の重鎮でもある。
「ノルマの言葉を待て」
「ノルマの」
「左様」
彼は同胞達に告げる。
「新月がその輝かしい顔を見せ微笑んだなら」
「微笑んだなら」
「神秘の鐘を三度打
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