第九章
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せん」
「えっ、けれど」
「皇帝陛下なのですよね」
そうイワノフに問う。
「まあそうだけれど」
「ならこんなのを飲まずにさあ」
後ろから巨大なボトルを出してきた。樽と見間違う程だ。
「これで」
「あの、これは」
そのボトルの巨大さに戸惑いながら船長に尋ねる。
「何でしょうか。いや」
彼もその気になってきた。それで口調を自分でも変えたのだった。
「何かな」
胸を張って偉そうに尋ねる。その演技が如何にも下手な喜劇の大根役者なのであるがやはりそれに気付く者は酒場にはいはしなかったのだった。
「ワインです」
「ワインとな」
「それもフランスの」
「ほう」
それを聞いて思わず目が輝いた。実は彼も酒は好きな方だ。それを隠すつもりは自分にもない。ましてやフランスのワインとなるとだ。自然に出てしまっていた。
「フランスのワインか」
「如何ですから」
巨大なそれをイワノフの前に差し出してきた。
「これで思いきり」
「そうだな」
鷹揚に応える。臭い芝居で。
「では貰おうか」
「はい、それでは」
杯にワインが注がれる。気付くと横にマリーが来ていた。やはり恭しい仕草で彼にかしずいていた。もうその態度だけで何なのかわかる程であった。
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