暁 〜小説投稿サイト〜
船大工
第七章
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
かも貴方の顔は」
 遂に誰かさえもわかった。
「市長ではないですか」
「何でまたイギリス人に化けて」
「あっ、いやこれは」
 周りの者達の突っ込みにあたふたとしだす。そうして次第に苦し紛れになってきた。
「これはだな。つまり」
「また変なこと考えてるんですか?」
「ここは静かにですね」
 市長の人望がわかる言葉であった。この市長は今一つ頼りないし頭もあれだという評価が一般的なのだ。そしてその評価は正解であった。
「して頂けると有り難いですが」
「ささ、お酒でも」
「ええい、そんなのはいらぬ!」
 遂に切れてきた。頭がよくなくても市長だ。ということは権限がある。その権限をあてずっぽうに使いだしてきた。ただし本人はこれが切り札だと考えているのだった。
「皆逮捕だ!」
「何っ!?」
「また変なこと言い出したぞ!」
 周りの者達は切れてしまった市長に呆れて言い出した。何処までも低い評価の市長であった。
「私もか?」
「私も」
「無論!」
 他国の大使達にまで言う始末であった。勿論後々の外交問題なぞ考えもしていない。よくぞこれで市長にまでなったものである。これも周囲の正当な評価である。
「皆捕まえてしまえ!」
「いや、お待ち下さい」
 ここで皇帝が出て来た。あまりの有様を咎めてのことである。
「もう少し落ち着かれて」
「私は落ち着いている!」
 本人しか思っていない発言であった。
「まずは御前からだ!逮捕する!」
「駄目だこれは」
 自分に向かって来た市長を見て遂に匙を投げた。
「話にならない。これでは仕方がない」
「逮捕だ、逮捕!」
「御免っ」
 飛び掛ってきた市長を捕まえた。そうして思い切り投げ飛ばしてしまった。
「う、うわああああっ!」
 市長はそのまま水瓶の中に頭から突っ込んだ。流石に大男である皇帝が相手では市長の相手にはならなかった。無謀と言えば無謀であった。
 市長は水瓶の中で気絶していた。皇帝はそんな彼を見下ろして言う。
「まずはこれで終わりだな」
「終わりだよなあ」
「まあ今の話はなかったことで」
 すぐに市長の命令は消された。あまりにも滅茶苦茶だったのでなかったことにされたのだった。皆とりあえずまだ混乱していたが大使達も帰りその場は収まった。皆で気絶した市長を水瓶ごと庁舎に連れて行きその場は終わったのであった。一人を除いて。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ