第七章
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第七章
「このところ非合法に入国してきた不貞外国人の破廉恥行為が目立つ!よってこの度彼等を一斉に検挙するものである!」
「というとこの中にいるのもかい?」
「そうだ?」
夫人に答える。
「だから私がここに来た!覚悟するがいい!」
「待て、待て」
ここでイギリス海軍艦長の服を来た市長が出て来た。見ればもう酩酊寸前で足元までふらふらしている。どうやら僅かの間に相当飲んだらしい。
「それには及ばぬ」
「御言葉ですが貴国には関係ないことですが」
「それが関係あるのだ」
そう自国の将校に返す。
「これがな」
「それは何故ですか?」
「それはな」
ここで帽子やらつけ髭やら鬘やらを外す。そうして本来の顔に戻る。
「私がこの街の市長だからだ」
「何故そのような御姿に?」
生真面目な将校は彼の突然の出現に目を顰めさせながら尋ねた。
「何かの御趣味ですか?」
「何でそうなるのだ、わしも探していたのは」
「密入国者をですか」
「そうだ。それでは私自ら見つけよう」
そう言って広間の中を見回す。そうしてまずはフランス大使とロシア大使を引き出してきた。
「この二人が怪しいな」
「怪しいも何も」
「軍服と格好でわからないかね」
船乗り達も船大工達も前に出て来た二人を見て囁き合う。
「かなり酔ってるしな」
「前から結構ぼんくらだったし」
「そうして次は」
今度はついさっきまで話をしていたイギリス大使を出してきた。
「この男だ」
「御冗談を」
イギリス大使は前に引き出されて思いきり顔を顰めさせていた。そうして市長に言うのだ。
「さっきまで御一緒だったではないですか。それがどうして」
「ええい、私の目は誤魔化せぬ」
だが酔っている市長にはそんな言葉は耳に入らない。それどころかさらに興奮するのだった。
「その証拠にその軍服は」
「誇り高きロイヤル=ネービーの軍服です」
伯爵は毅然として答える。
「これが何よりの証拠ではないのですか?」
「ふん」
その言葉にオランダ海軍の将校達は露骨にあざけりの目を向けてきた。
「海賊風情が」
「何っ!?」
「何を偉そうに。威張れたことではありますまい」
「それはそちらも同じでしょう」
市長は何時の間にかイギリス人になりきっていた。ところが。
「もっとも我がオランダは」
「我が!?」
完全な失言であった。身元を自分でばらしてしまった。
「貴方はオランダ人ですか」
「ならそれは変装で」
「あっ、いや」
自分の失言に気付いてあたふたとしだすがもう遅かった。忽ちのうちに窮地に陥る。
「これはですな。その」
「しかし貴方は今」
「確かに我がオランダと」
周りの船乗り達も大工達も市長に言う。
「仰いましたが」
「し
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