第二章
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「ああしてトライとかシュートの練習してな」
「鬼気迫るっていうのか?あれ」
「ちょっと普通じゃねえよな」
「ああ、違うよな」
「どうもな」
「あの試合でのミスがそんなに堪えたのかね」
その原因はもう彼等も察していた。
「シュートのミスが」
「だろうな。あの時凄く塞ぎ込んでたしな」
「その次の日からああだしな」
「じゃあやっぱりあのシュートのミスだろ」
「それだよ」
彼等は今もトライにシュートを一人で必死にしている良馬を見ていた。彼はとにかく必死に練習をしていた。
勿論朝も放課後もだ、汗と砂に塗れて必死にラグビーを続けていた。
その彼にある日の放課後コーチの有藤勇吉が声をかけてきた。
この八条学園の卒業生で八条大学院でスポーツ力学を学んでいる。一メートル九十を超える長身にオールブラックスの如き体格だ。四角い角刈りの顔はゴリラの様だ。
だがその外見とは裏腹に温厚で彼が怒っているところは誰も見たことがない、心優しくラグビー以外の趣味は猫カフェ通いだ。
その彼が良馬にこう声をかけてきたのだ。
「最近悩んでますね」
「ちょっとシュートのことで」
「それはわかってます。原因もね」
有藤はバスの穏やかな声で良馬に述べた。
「私もね。君はよくやっています」
「そうですか」
「まずは練習」
有藤の持論でもある。
「人は努力があってこそだよ」
「延びるんですね」
「駄目な奴は何をやっても駄目」
有藤はこの言葉も出した。
「この言葉は間違いなんですよ」
「誰でも最初は駄目だからですね」
「モーツァルトも最初は楽譜が読めなかった」
詠み方を教えてもらってから読める様になった、人類の音楽史における最大の天才でもそうだったというのだ。
「だから人間練習なんです」
「そして努力ですね」
「そうだよ。そして君は努力をしています」
「だからいいんですか」
「いいdす。ただね」
「ただ?」
「君は一つ忘れていることがありますね」
有藤の言葉は指摘したものになっていた。
「それがあるね」
「忘れていることですか」
「そう、それがあるんだよ」
こうラグビゴールの前で良馬に話すのである。
「それが問題ます」
「といいますと」
「明日の昼の練習だけれど」
有藤は優しい微笑みで良馬に話した。
「ちょっと付き合っていいでしょうか」
「あっ、練習の相手を」
「させてもらっていいでしょうか」
「よかったらお願いします」
有藤の自分への気遣いを感じ笑顔で応えた良馬だった。
「それじゃあ」
「うん、じゃあそういうことだね」
「すいません、本当に」
「いやいや。私はコーチです」
有藤は微笑んで良馬に返す。
「これが仕事だから」
「いいんですか」
「そう。それじゃ
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