第六章
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りにも下手な変装で皇帝も思わず酒を噴いてしまった。
「どうしたんだい、一体」
「いや、何も」
慌てて仲間の船大工に返す。
「何もないけれど。ただ」
「また変な船長が来たな」
「ああ、全くだ」
自分の国の大使に呆れながら答える。
「何処の船の人なのかね」
「さてね。それはわからないが」
「飲みたくて来ただけだろうな、あれは」
「殆どはそうだな」
彼の顔を見ただけでそれはわかる。本当に酒を飲みたくて仕方がないように辺りを見回しているからだ。
「殆どは、かい」
「ひょっとしたら全部かもな」
早速飲みはじめた大使を見て述べる。
「まあ彼はいいとしてだ」
「うん」
「飲むか」
「飲もう」
そう話して飲みだす。するとそこに夫人がやって来た。そして威勢良く船乗りや船大工。こっそりと身分を隠している面々にも言うのだった。
「皆、飲んでくれてるんだね」
「ああ、奥さん」
「盛大にな」
船乗りも一緒になっている市長や大使達もそれに応える。
「元気にやってるぜ」
「今日は有り難う」
「さあ、どんどん飲んでね」
夫人はまた彼等に言う。
「お酒も食べ物もまだまだあるからね」
「よしっ」
「じゃあ今度は奥さんから俺達にだ」
「何かあるの?」
夫人は上機嫌の彼等に笑顔で応える。
「あるさ」
「俺達から奥さんへの贈り物、それは」
それぞれ席を立つ。そうして言うのだった。
「歌に踊りだ」
「それでいいかな」
「ええ、喜んで」
夫人は笑顔でそれに応える。
「それなら見せてもらっていいわね」
「おうよ」
「じゃあはじめるか」
「さて、それではわしも」
仲間達が席を立ち踊りの用意をするのを見て皇帝も立ち上がった。
「踊るとするか」
「あんたも踊るのかい」
「ああ」
にこりと笑ってイワノフに答える。
「こういう時に踊るのがな。一番楽しいしな」
「見たところダンスも上手そうだね」
「まあ経験はある」
宮廷のダンスのことだ。しかし彼はどちらかというとこうした場でのどんちゃんした踊りや唄が好きなのだ。それが彼の好みであった。
「あんたはどうするんだい?」
「マリー、一緒にいいかな」
「ええ」
マリーはイワノフに声をかけられにこりと笑ってきた。
「それじゃあ御願いね」
「うん。それじゃあ」
二人も席を立つ。そうして踊りをはじめようとした時に今度はオランダ海軍の軍服を着た将校がやって来た。また誰かの変装かというとそうではなかった。
「達する!」
踊りをはじめようとした一同を止めてから言った。そうして懐から白い紙を取り出して自分の前に広げてから高々と述べるのであった。
「我がオランダ政府からの通達である!」
「通達?」
「何だ一体」
船乗りも船大工
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