第五章
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「それでなんですけれど」
「そうですよね。それにしても」
「この宴のことですか」
「あの、ソドムだの毛皮を着たのはっていうのは」
「実はゴモラも入っています」
こちらもだというのだ。
「今宵は人の全てのタブーを解き放った宴なのです」
「それがこれなんですか」
「そうです、如何でしょうか」
男は淡々とした調子で奈央に影の様に話してくる。
「お気に召されたでしょうか」
「これが一切のタブーを否定したパーティー」
「そうなのね」
奈央だけでなく綾女も呆然として言う。
「何ていうかこれって」
「凄過ぎるけれど」
「香水の香りにお酒に食べ物に」
「しかも出したものの匂いまであって」
美醜の香りも入り混じっていた、部屋全体がむせかえる様などう表現していいかわからない匂いにも支配されていた。
そして馬がだった。
女の後ろにいた、綾女は目を丸くしてそれを見ながら言った。
「あの人お婆さんだけれど」
「本当に馬とって」
「こんなのこの目で実際に見るなんだ」
「夢にも思わなかったし」
「次回からどうでしょうか」
呆然となったままの二人にまた男が言ってきた。
「この宴は。当店の最高の宴ですが」
「いえ、ちょっとその」
「何ていいますか」
二人は今度は逞しい髭の男と犬を見ながら応えた、目はそちらに釘付けだ。
「これってその」
「ソドムにゴモラってこんなのだったんですか」
「マゾッホが入っているにしても」
「こんなのだったんでしょうか」
「そうかも知れません」
男もそうであった可能性は否定しない。
「二つの街に交流があったと想定してのものでもありますが」
「それで神様に滅ぼされた」
「そうなったんですね」
「神は惨たらしい存在です」
男はキリスト教の神をこう言って否定した。
「最高の宴を否定するのですから」
「ですか、それで」
「神は駄目なんですね」
「当店では他にも様々な宴を用意しています」
それはどういったものかというと。
「倫理を全て否定しあくまで快楽のみを追い求めた最高の宴を」
「これの他にもまだまだあるんですか」
「そういうのが」
「興味をもたれましたらどうぞ」
「ですか」
「じゃあ」
二人は唖然となったまま空返事を返した、そしてだった。
見学をそそくさと止めて店を後にした、その次の日。
奈央は学校で疲れきった顔で自分と同じ顔になっている綾女にこう言った。
「昨日の夜どうだった?」
「帰ってからよね」
「寝られた?」
「そっちは?」
「全然」
奈央は憔悴しきった顔で綾女に答えた。
「というかもうね」
「寝られなかったのね」
「あのお部屋のことが頭にこびりついて」
それでだった。
「とてもね」
「私もよ」
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