第五章
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を着て金髪の鬘に化粧をして黒い目の顔をにやにやさせた男がやって来た。一目で何か何処の人間かわかりそうであった。
「おや、ここに」
彼は辺りを見回しながら気取った動作でペーターの側に来た。
「マドモアゼル=マリーがおられたのですが」
「マリーはとは誰か知らないが一人のお嬢さんがあっちに行ったぞ」
ペーターはそう言ってイワノフとマリーが行った方の全く逆を指差した。
「あっちにな」
「そうなのか。ではあちらへ」
「うん。行った方がいいな」
「しかし貴方は」
ここでフランス人はペーターについてあることに気付いた。
「どうにもこうにもフランス語がお上手で」
「そうかな」
「いえ、しかもその気品」
彼はここで持ち前の勘のよさを出してきた。どうやらペーターの国の大使より余程外交官として優れているようである。フランスは外交が上手い国なのは伝統である。実に高慢で鼻持ちならず、敵もそれこそ世界中にいるが外交能力が高くて助かっている。
「貴方が皇帝陛下ですね」
「むっ」
ペーターはその言葉に目を鋭くさせてきた。
「ロシアの。違いますか?」
「そういう貴殿も只のフランス貴族ではないな」
「否定はしません」
彼もにこやかに笑ってペーターに返す。
「私はフランス大使シャトーヌフ。爵位は侯爵です」
「シャトーヌフ侯爵か。覚えておこう」
ペーターはそれを聞いて述べる。
「わしの心の中だけでな」
「では私も」
侯爵はペーターがこれを秘密にしておくと申し出たのでそれに合わせてきた。
「そうしましょう。しかし」
「ここでは何だ」
話し合いの場を変えることにした。
「他で。じっくりとな」
「はい。それでは」
こうして二人は立ち去り酒場の前は誰もいなくなった。何やら面白そうに話が進んでいた。
それから数日後。夫人の息子が結婚したので船大工達と船乗り達が大きな酒場を借り切って盛大に飲み食いをしていた。宴である。
「いやあ全く」
「めでたいことで」
彼等はそう言い合いながら酒を楽しむ。その中にはペーターこと皇帝とイワノフもいる。皇帝は上機嫌で木の杯の中のワインやビールを飲み焼肉を手で掴んで口の中に入れていた。それを見て誰も彼がロシアの皇帝であるとは思わない。
「夫人に乾杯!」
皇帝は上機嫌で杯を掲げる。
「その御子息にも乾杯しよう」
「そうだそうだ」
「ペーターさんもいいことを言うね」
「何であろうとも酒が飲めるのはいいことだ」
皇帝は上機嫌で仲間達にそう述べる。
「だからこそ皆も」
「そうだな」
「盛大に飲もう」
「マリー、君もな」
イワノフはここで隣の席に座っているマリーに声をかける。大柄で荒くれ者の男達の間で座っていた。
船に携わる者達が上機嫌でやっていると。そこに海
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