第四章
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「今日は特別な日なのですが」
「特別?」
「特別っていいますと」
「ソドムの百二十日です」
ここでもサドの作品だった。
「それに毛皮を着たヴィーナスです」
「毛皮を着たって」
「マゾッホの作品です」
今度はマゾヒズムの語源になった小説家だ。
「今宵のイベントは?」
「?何ですかそれ」
「意味がわからないですけれど」
「まさに禁断の快楽の宴です」
男はいぶかしむ二人にこう答える。
「今宵の宴なのです」
「あの、まさか麻薬とかじゃないですよね」
「そういうのは使わないですね」
「当店はそういった誤った快楽は追求していません」
だから違うというのだ。
「麻薬による快楽は偽り、真の快楽は違うものです」
「だったらいいですけれど」
「流石にまずいですからね、麻薬は」
「そもそも犯罪です」
男はこのことについても言及した。
「決してしてはならないものです」
「このお店は犯罪はしないんですね」
「そうしたことも」
「他のお店ならいざ知らず当店は違います」
そうした悪質な店ではないというのだ。
「法律は犯しません。ただ快楽を求めるだけです」
「つまり健全な快楽ですか?」
奈央は男の言葉からこう考えた。
「そういったのですか?」
「健全。健全については言いません?」
「けれど法律は犯さないんですよね」
「そのことは保障します」
法律のことでは二人の方に問題があった、この店は十八歳未満だがそれでも身分を偽って来ているからだ、それを言えば二人の方がまずかった。
「ですが」
「それでもですか」
「快楽は何処までも果てしないもの」
「ソドムでも毛皮でもですか」
綾女が問う。
「そうなんですね」
「そうです、ではお入り下さい」
地下の階段を降りその果てにある扉の前に来た、その向こうに快楽の宴があるというのだ。
男が扉を開け二人は中に入った、するとそこでは。
男女が入り混ざり絡み合っていた、そして。
互いに鞭打ち打たれ蝋燭もあった、そのうえで。
穴という穴が塞がれ互いの身体を貪り合う、そこにいるのは若い奇麗な男女だけではない。
年老いた老人達もいた、醜く太ったりしている者達も。
その彼等がお互いに絡み合い汚れた酒や馳走も口にしながら部屋のあらゆる場所で交わり続けていた。
一人の女に数人の男が群がっていれば逆もある、無論同性同士でも。
床には食べた後のものや液体、そして出されたものまであった、見ればそうした遊びをしている面々もいる。
犬や馬までいて彼等も参加していた、それはまさに。
「ちょ、ちょっとこれって」
「そうよね」
奈央も綾女も互いに蒼白になった顔を見合わせた。
「普通じゃないっていうか」
「何でもあり?」
「これがソドムっ
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