第三章
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らに述べる。
「俺もあんたも注意しようぜ。下手をすれば本国に強制送還だ」
「それはな。あるな」
ペーターもその言葉に頷く。
「わしも気をつけていくか」
「そういうことさ。もっともあの市長は結構抜けてるけれどな」
「確かにな。あの市長は」
ペーターも言うところを見ると本当に結構抜けている市長のようである。何かと抜け目のない商人国家であるオランダでもそうした人間はいるのだ。
「抜けているな」
「けれどまあ用心して」
「うむ」
またイワノフの言葉に頷く。
「それではな」
「用心に用心を重ねて」
そんなことを話していると赤毛で栗色の瞳の女の子が酒場にやって来た。小柄で青と白の上着とスカートを着てか鬼がそばかすがある。そのそばかすが可愛い。
「ペーター、そこにいたのね」
「どっちのだい?」
「お髭のない方よ」
そうペーターに応えて笑みを浮かべる。
「ペーター=イワノフに用があるのだけれど」
「僕にかい?マリー」
「ええ」
マリーと呼ばれた少女は彼に応えてにこりと笑ってみせてきた。
「そうよ。実はここに来るまでに何か変な人を一杯見たし」
「変な人!?君の叔父さんだけじゃなくて」
実は彼女はその市長の姪なのである。彼女にとっても叔父はかなり抜けているどうにもこうにも変てこりんな人物なのである。それでも市長なのだからある意味凄いことである。
「他に誰が」
「フランス人もいたわ」
「ほう、フランス」
ペーターはフランスと聞いて目を楽しげに輝かせてきた。
「あの文化の国がか」
「とても性格の悪い国よ」
しかしマリーはフランスに対して不機嫌そのものの声で言うのだった。ロシアにとってはフランスはまさに西欧文化の中心地だがオランダにとっては高慢で鼻持ちならない嫌な奴でしかない。この当時フランスはオランダと何かにつけて対立もしていたのだ。
「何か私に声をかけてきて」
「ナンパかい?けしからん奴だ」
イワノフはそれを聞いて怒りを露わにしてきた。手に持っている木の杯に指が食い込む。
「フランス人は無類の女好きだとは聞いていたけれど」
「けれど何かおかしかったわ」
マリーはこうも言う。
「何かって?」
「誰かを探しているみたいなのよ。それに」
「それに?」
「ロシア大使も来ているわよ」
「えっ」
「何と」
二人のペーターはロシア大使という名前を聞いて同時に顔を顰めさせた。実は彼等にとってそのロシア大使とは鬼門以外の何者でもないのだ。
「ロシア大使も来ているのか」
「まずいことだ」
二人のイワノフはまたそれぞれの口で言うのだった。
「僕の身分が」
「わしの身分が」
危惧は同じものであったがそれの中身は違うものであった。
「ばれてしまうな。そうなれば」
「何かと厄
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