第五章
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「全部ね」
「じゃあ」
「私の名前言うわね」
ここでも彼女のリードで話は進む。
「真鍋悠っていうのよ」
「真鍋さんですか」
「そう、仕事はね」
このことはもう言うまでもないが悠はあえて言った。
「八条百貨店のエレベーターガールよ」
「そうですよね」
「君の名前は?」
「名護晋太郎です」
晋太郎は緊張の極みの中で答えた。
「八条学園高等部普通科の一年です」
「あっ、後輩なの」
「後輩ってことは」
「そう、私もあの高校に通ってたの」
悠は微笑みながら晋太郎に話していく。
「商業科ね。七年前に卒業してすぐにあの百貨店に就職して」
「それでなんですか」
「今エレベーターガールをしてるのよ」
「それであそこにいつも」
「そうよ。それで本題に入るけれど」
晋太郎がいよいよ強張った、何を言われるか全くわからない。
それで蒼白になり身体を震わせる、処刑台を前にした死刑囚の様だった。
悠はその晋太郎に彼とは正反対にリラックスして告げた。
「お店には来てもいいけれど」
「はい」
「内緒よ、お店には」
こう言ってきたのだった。
「いいわね、携帯のメアドは交換しても」
「それって」
「お店には内緒、まだ高校生の子と付き合ってるってわかったらちょっとまずいからね」
「だからですか」
「内緒よ。お店には」
百貨店にはというのだ。
「くれぐれもね」
「あの、つまりは」
「だから。いいわよ」
交際してもだというのだ。
「私もね」
「嘘じゃないですわね」
「嘘でこんなこと言う人間じゃないわよ」
悠はそのことも言った。
「それじゃあね」
「ううん、そうなんですか」
「これから宜しくね。お店じゃ知らない顔するけれど」
それでもだというのだ。
「普段はこうしてね」
「一緒にですか」
「楽しく過ごしましょう、いいわね」
「わかりました、それじゃあ」
晋太郎は飛び上がらんばかりになって応えた、こうして彼と悠の交際ははじまった。
その日はカラオケで二人で歌い飲んだ、そうして。
彼は次の日まさに天国にいる顔でこうクラスメイト達に話した。
「いや、本当にさ」
「夢みたいだな」
「信じられない話だよな」
「ああ、俺もそう思うよ」
彼自身もだというのだ。
「阪神が優勝したみたいな気分だよ」
「冗談抜きで今年は優勝して欲しいな」
「ああ、そうだな」
「あのチームはな」
「折角応援してるんだからな」
こうした言葉も出る。
「ったく、最近な」
「また暗黒になりそうだからな」
「いい加減打線打てよな」
「ピッチャーは頑張ってるんだからな」
「とにかくな」
こうした話も出た、その中でまた言う晋太郎だった。
「夢みたいだけれど夢じゃない、だ
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