第二章
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晋太郎はその話をしてから数日後そのエレベーターガールがまだ置かれている八条百貨店本店に入った、友人達も一緒だ。
彼等は百貨店のガラスの大きな入り口を通って白く様々な店舗があり客と店員で満ちている百貨店の中に入ってそのうえでだった。
茶髪の友人が他の面々に言った。
「本屋さん十階だったよな」
「ああ、十階だよ」
「その階だよ」
他の面々がすぐに答える。
「参考書はそこだよ」
「一杯あるからな」
「参考書もないとな」
彼等はこう話していく。
「教科書だけじゃ今一つだからな」
「そうなんだよな、特に社会系な」
「そっちはだよな」
「ああ、それでだよ」
彼等は店の奥にあるエレベーターに向かいながら話す。そこから一気に十階に行くつもりなのだ。
「まあ漫画も買うか」
「ラノベも探してな」
「あとゲームの攻略本だな」
「いいのあったら買おうな」
「そうだな」
そうした話をしながらエレベーターに向かう、エレベーターの前はダークブラウンの扉に灯りで示された階がある。
白い大理石を思わせる床とやはり白い壁と天井の中で一分程度待ち。
一階に来たエレベーターに入る、そして彼等から見て左手にいるエレベーターガールを見ると。
晋太郎の顔が強張った、一瞬にしてだ。
一六〇程のやや小さめの黒い目だった、眉は普通の濃さで短めである。
薄い唇はピンクで横に広い、鼻立ちは低くなく程よい高さだ。肌が白い。
黒髪を肩の長さではじまり前から後ろに斜め前に切り上げている。
赤い制服と膝までのタイトスカート、それに洒落た帽子というこの百貨店のエレベーターガールの征服を着ている、その彼女が硬質の色気のある声で問うてきたのだ。
「何階ですか?」
「えっ?」
「何階に行かれますか?」
仕事としての問いだ、だが。
晋太郎は彼女の顔と声に強張ったまま答えられない、その彼の代わりに。
友人の一人がこう彼女に言った。
「十階です」
「十階ですね」
「はい、そこにです」
「わかりました」
普通のやり取りだった、そして。
そのやり取りの後で十階に向かう、エレベーターの中にいる間ずっとだった。
晋太郎はエレベーターガールを見続けていた、そして。
十階に来てもだった。ずっと彼女を見ていて。
友人達が怪訝な顔になって彼に言った。
「おい名護いいか?」
「十階に着いたぞ」
「行くぞ」
「どうしたんだよ」
「あ、ああ」
戸惑いながら応える晋太郎だった、それでエレベーターを出るが。
その間も彼女を見ていた、そうしてだった。
帰りのエレベーターでも一緒だったのでずっと見ていた、その彼を見てだ。
百貨店を出て帰る途中に周りは怪訝な顔になってこう尋ねた。
「おい、まさかと思うけれど
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