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戦国御伽草子
弐ノ巻
霊力

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その身体は、氷のように冷たかったのだ。



兄上は義母上にも手を翳した。傷が、癒えていく。けれど、姉上様の時と比べるとその速さは遥かに遅かった。



霊力(ちから)は無尽ではないのだ。(おち)の霊力は一番疲れると聞いた。こんな、重症の傷を立て続けに二人も治せば、兄上はどうなってしまうのか。



「やめて!もういい、もういいからっ!」



あたしは泣きながら兄上の腕に縋った。



「瑠螺蔚…」



兄上は細く呟いた。その額には滝のような汗がにじんでいた。



そしてそのまま、糸が切れたようにどっと倒れてしまった。
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