第一幕その八
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る。
「あら」
アディーナは彼の姿を見て顔を明るくさせた。
「丁度いい時に」
ここで咄嗟に閃くものがあった。
ネモリーノを見た。彼が出てきて急に不機嫌になっている。
(決まりね)
そう思ってほくそ笑んだ。そしてベルコーレに顔を向けた。
「ねえ軍曹さん」
「何だい?」
「戦いの状況はどうかしら」
「思わしくないね。負け続きさ」
彼は力なく笑って答えた。
「すぐに挽回できると思うけれどね」
「今にも?」
アディーナは意味ありげに問うた。
「機会があればね。ただしその機会がないんだよ」
ここで彼女に目を向けた。
「機会がね」
何を言わんとしているかは明白である。アディーナにとって僥倖であった。
「それがここにあったら?」
横目でネモリーノを見ながら問うた。
「えっ!?」
ネモリーノはその言葉に一瞬我を失った。
「どれだけ貴方がここにいられるかが問題だけれど」
ネモリーノは必死に動揺を隠しながらベルコーレの次の言葉に耳を澄ませた。
「どれだけかい」
「ええ。どれだけ?」
「一週間程だね」
「一週間ね」
アディーナは頷きながらネモリーノを見る。だが彼は完全に落ち着きを取り戻していた。ケロリとしている。
(おかしいわね)
アディーナは首を傾げた。それはベルコーレも気付いていた。
(この二人もしや)
ネモリーノとは違いこういうことの経験は多い彼である。事情はいささか読めてきた。
(俺は当て馬かも知らんな)
そう考えたがそれは顔には出さなかった。そしてアディーナに問うた。
「一週間あれば充分だと」
「わかったわ」
アディーナはそれに頷いた。ネモリーノを見るとまだ平気である。
(一週間か。驚いて損したよ)
ネモリーノは薬のことが頭にある。だから余裕を持っている。しかしアディーナはそんなことは知らない。だから余計に焦っているのだ。
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