第一幕その七
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た」
彼は腹をさすって言った。実際に美味しいと満足していた。
そこにアディーナが出て来た。如何にも今来たばかりだという態度である。
「来たな」
ネモリーノは彼女を見て呟いた。
「いよいよだ」
そしてこれから起こるであろうと彼だけが確信していることに胸を打ち震わせていた。
「やけに嬉しそうね」
アディーナは内心の意地悪にも似た憤りの心を必死に抑えながら言った。
「私の忠告を聞き入れてくれたのかしら」
「まあね」
ネモリーノは鼻で笑った様に答えた。
「おかげで随分気が楽になったよ」
「それはよかったわ」
アディーナは答えた。だがその本心は全く違っていた。
(どういうつもりなのかしら)
顔は笑っていたが目は全く笑ってはいなかった。
(この私にそんな態度をとるなんて)
胸が怒りで燃え上がっている。だがそれは何とか隠している。
(見ていらっしゃい。死ぬ程後悔させてあげるから)
だがそれは流石に口には出さない。表情だけであるがにこやかな態度を崩さない。
「けれどまだ苦しいのではなくて」
「確かにね」
ネモリーノは満面に笑みを讃えて答えた。
「けれどそれもほんの少しさ。あと一日で消えるよ」
「あら、一日で」
「うん。それでもう僕は安息の日々に入ることができるのさ」
「それは良かったわ」
アディーナはこめかみをヒクヒクさせていた。
「心から祝ってあげるわ」
内心は今にも爆発しそうであったが。
(只じゃ済まさないわよ)
その心の顔は夜叉の様になっていた。だがやはりそれは表には出さない。
(そう、もう少しだ)
ネモリーノの内心は彼女のそれとは見事なまでに正反対であった。
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