第十九話 懸念
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展すればするほどエーリッヒの影響力は強まる。だがそれを責められるか?」
「……いや、責められんな。……辺境をこれまで見捨ててきたのは他でもない帝国政府だ」
ギュンターが溜息を吐いた、俺もだ。
「オーベルシュタイン中将がエーリッヒを危険視するのも当然なんだ」
「ギュンター!」
「勘違いするなよ、アントン。俺は中将のやり方を認めているわけじゃない、だが中将が何を危険視したか、それは分かる様な気がするんだ……。いや理解しなければいけない、そうでなければ中将に対抗できない。おそらく中将は徐々に徐々にだが辺境が一つの人間の下に経済的に政治的に纏まるんじゃないか、中央と対立するんじゃないか、そう考えたんだと思う」
「……馬鹿馬鹿しい、考えすぎだ。確かに辺境は発展しているかもしれない、一つに纏まりもするだろう。しかし中央から比べれば遥かに小さく弱体だ。対立すればあっという間に潰れるだろう。そんな事をするほどエーリッヒは馬鹿じゃない」
そうだ、エーリッヒはそんな馬鹿じゃない、杞憂だ。
「今はそうだ。だが十年後、いや二十年後はどうだろう。辺境が独自の経済圏を作って中央と対立する、その可能性が有る、オーベルシュタイン中将はそう考えたんじゃないかと思う。そしてその時はとんでもない騒乱になるだろうと。……否定できるか?」
「……」
否定できるだろうか? 十年後、二十年後か……。おそらく帝国は宇宙を統一しているだろう、その中で中央と辺境が対立する? 馬鹿げている、宇宙が統一された中で対立? そんなことは有り得ない……、有り得ない筈だ……。
「……否定は出来ないな」
我ながら口調が苦い。
「アントン……」
帝国は宇宙を統一しているだろう。反乱軍の旧領土が果たして何処まで帝国の支配を受け入れるか、心服するか……。彼らにとっては帝国中央よりも辺境の方が身近に有る……。反帝国感情の強い新領土と自らの力で発展してきたと自負する辺境……。経済的な繋がりは現段階で既に密接なものになりつつある。十年後、二十年後、……統一された宇宙の中で対立が起きるかもしれない。その時、その中心にいるのは……。
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